ランチョンセミナー2 
リアルタイム3Dエコーの先天性心疾患への応用
長野県立こども病院循環器科
里見 元義
 リアルタイム3D心エコー図装置が2002年Philips Medical Systems社より世に出され,いよいよ臨床応用開始された.小児循環器領域では,心内形態をそのまま観察することによる (1) 形態診断への応用と,その特徴であるリアルタイム性を駆使して,(2) カテーテルガイドとしての応用とがある.

1.形態診断への応用
 断層心エコー図では観察不可能であった心房中隔,心室中隔,心房後壁,心室側壁などの表面の形態を観察することが可能になった.その結果心房中隔欠損,心室中隔欠損の形状を観察することが可能となった.また立体的な位置関係の把握は断層心エコー図では検者が断面を傾けながら頭の中で立体構造のイメージを作り上げていたが,リアルタイム3Dエコー図では,すでに3Dとして表示されるおかげで,客観的情報として立体構造を示すことが可能となった.110例の臨床応用の結果を供覧する.外科医との術前検討において,共通のイメージを持ってディスカッションできる点で臨床に貢献する.

2.カテーテルガイドとしての応用
 小児のカテーテルでは被検者である小児と,検者に対するX線被曝の問題がある.特に最近のカテーテル治療を施行するに当たっては,長時間のX線被曝が問題となる場合もある.カテーテルガイドの一部でもX線透視に代わって,リアルタイム3Dエコーを利用することが可能であれば,臨床上大いに貢献することになる.
 2003年 4 月から12月までに心臓カテーテル検査を受けたCHD患者のうちカテ中リアルタイム3D心エコー図が施行できた34例〔年齢は日齢 1 から20歳(med 7 カ月),体重2.9~40kg(9.7±8.9:m±SD)〕について3Dエコーによるカテーテルガイドの評価を行った.剣状突起下アプローチと胸骨傍アプローチを用いて,さまざまな種類のカテーテルの形状と先端の位置を正しく描出できたか否かについて評価した.その結果pig tail catheterは描出率100%, 先端位置100%(以下描出率,先端位置認識率の順),Berman balloon catheter〔11/11(100%),11/11(100%)〕,血管形成術用balloon catheter〔4/4(100%),4/4(100%)〕,multipurpose catheter〔5/5(100%),2/5(40%)〕であった.心筋生検用のbiotomeは 2 例に対して観察した結果〔2/2(100%), 0/2(0%)〕となっていた.2D断層心エコー図によるカテーテルガイドに比較して,カテーテル先端を追跡する技術はさほど必要とはされなかった.
 リアルタイム3Dエコー法は,臨床応用は開始されたばかりであるが,アプローチと画像処理の工夫により,さらに安全なカテーテルガイドに貢献する大きな可能性を秘めている.


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