B-I-3
PA-VSD-MAPCAにおける中心肺動脈の重要性
福岡市立こども病院循環器科1),福岡市立こども病院新生児循環器科2),福岡市立こども病院心臓血管外科3)
漢 伸彦1),佐川浩一1),石川司朗1),阿部正徳1),成田純任1),松村昌治1),中村 真1),牛ノ濱大也1),總崎直樹2),角 秀秋3)

【背景】主要体肺動脈側副血行(MAPCA)を伴う肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損(PA-VSD)に対する治療はMAPCAの集束術(UF)後に右室流出路再建を計画する戦略から,中心肺動脈(cPA)の発育を期待して早期にcPAに体肺短絡術をおき右出流出路再建を行うものへと代わってきた.【目的】PA-VSD-MAPCA術後遠隔期におけるcPAの重要性を検討するため,cPAが全肺野の50%以上を支配する発育した肺動脈を有する右室流出路再建術後群(well-PA群)とUF-MAPCAが全肺野の50%以上に達する同術後群(poor-PA群)の中期遠隔期成績を比較した.【対象】当院が経験したPA-VSD-MAPCA 50例(1984~2004年)のうち,最終修復術後の心臓カテーテル検査を終了した30例(well-PA群13例,poor-PA群17例)である.【結果】データは平均値でwell-PA群vs poor-PA群(*:p≦0.05,#:p≦0.20)で示した.最終修復術までの姑息術回数:1.5 vs 2.0回,初回姑息手術時年齢:2.5 vs 4.7歳(#),最終手術時年齢:4.5 vs 6.6歳,根治術後右室左室圧比:0.53 vs 0.80(*),主肺動脈収縮期圧:31 vs 46mmHg(*),心拍出量:4.1 vs 4.0 l/min/BSA,心胸郭比:59 vs 59%,運動負荷試験時の最高心拍数:76 vs 68%normal(#),同最高酸素消費量:90 vs 78 %normal,血漿ANP値:42 vs 104pg/ml(#),同BNP:35 vs 142pg/ml(#),要在宅酸素療法率:8 vs 24%(#),要投薬率:42 vs 82%(*).【考案】well-PA群は血行動態指標,運動面の術後QOL,および予後予測因子である血漿中Na利尿ホルモン濃度の点でpoor-PA群より有利であると理解され,本疾患では積極的にcPAの発育を促す戦略が患者の遠隔期QOLにとって有利であることが示唆された.

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