B-I-6
膜様部心室中隔欠損における右冠尖逸脱の診断に関する検討
和歌山県立医科大学小児科1),昭和大学横浜市北部病院循環器センター2),紀南綜合病院小児科3),和歌山県立医科大学第一外科4)
鈴木啓之1),武内 崇1),上村 茂2),南 孝臣1),末永智浩1),西原正泰1),吉川徳茂1),渋田昌一3),平松健司4),岡村吉隆4)

【背景】近年,心室中隔欠損症(VSD)のうちKirklin分類のI型VSDだけでなく,II型(膜様部)VSDにも右冠尖逸脱(RCCH)が比較的多く合併すると報告されている.しかし,I型VSDのRCCHが,弁尖が前方に変位するのに対して,II型VSDでは下方に変位するため,その診断が困難であることが多い.【目的】II型VSDのRCCH診断について検討すること.【対象】2000年 1 月~2004年12月に当科を受診した,II型VSDにRCCHの合併を認めた症例(VR群),II型VSDの診断で心内修復術を受け手術時にRCCHの合併を認めないことを確認できた症例(V群),それぞれ 7 例,計14例である.コントロールとして,同時期に心臓カテーテル検査を行い,心内奇形がなく冠動脈病変も造影上認めなかった川崎病治癒後の 7 例(C群)である.【方法】Philips社製Integris BH5000シネアンジオ装置を用いた心臓カテーテル検査時の左心室造影側面像を用い,各症例の収縮期末期のバルサルバ洞最大径(Vmax)とバルサルバ洞直上の上行大動脈径(A)を求めて,Vmax/A値を算出し,VR群,V群,C群間で比較検討した.統計学的検討はMann-Whitney U検定を用いた.【結果】3 群間の年齢,性に有意差は認めなかった.Vmax/A値は,VR群(1.34~1.50,中央値1.42),V群(1.20~1.34,中央値1.30),C群(1.12~1.33,中央値1.22)であった.Vmax/A値を 3 群間で比較すると,VR群は,V群とC群いずれの群よりも有意に高値であった(p < 0.01).V群とC群間には有意差は認めなかった(p = 0.09).【まとめ】II型VSDにおけるRCCHの診断の端緒にVmax/A比の増加,すなわちバルサルバ洞の拡大所見が有用である可能性があり,大動脈弁閉鎖不全の有無との関連や心エコー検査との相関についても検討したい.

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