B-I-8
先天心合併門脈欠損の臨床的多様性─発症時期,診断,臨床症状,予後─
神奈川県立こども医療センター循環器科
林 憲一,中埜信太郎,上田秀明,康井制洋

【背景】門脈欠損(absence of the portal vein:AP)は門脈体循環シャント(portosystemic shunt:PS)を来す原因の一つであり,多様な臨床像を示す.CHDに合併した場合,その多様性は増強する可能性がある.【目的】CHD合併APの臨床像を明らかにする.【対象】最近 2 年間に当院で経験したCHD合併AP 4 例(三尖弁閉鎖兼主要体肺側副血行動脈,ファロー四徴兼肺動脈閉鎖,純型肺動脈閉鎖Fontan術後,多脾症候群合併心内膜症欠損根治術後).【結果】(1)発症(a)初発症状:吐血,意識障害,喀血,黄疸で各症例により異なっていた.(b)発症時期:0.15~14.2y,中央値2.7yで,2 例は乳児期以降に発症した.(2)診断(a)診断確定方法:腹部エコーおよび造影CTにて確定した.CT上,PSは直接IVC(2 例)あるいは左腎静脈(2 例)に還流しており,うち 2 例ではPSに関連した静脈瘤(胃食道 1,胃 1)を形成していた.(b)診断時のL/D:有意な異常所見はT-Bil,γGTPおよびPTINRの上昇であった(T-Bil:2.3~7.6,γGTP:93~605,PTINR:1.52~1.64).トランスアミナーゼ上昇の程度は軽度(50~100)であった.NH3上昇は意識障害を来した 1 例のみ(115)であった.血中ガラクトースは正常.(3)臨床経過(a)症状:重症例 1(胃食道静脈瘤からの出血および肝不全),軽快例 3{感染を誘因としたNH3上昇に伴う意識障害,PAとの関連不明な喀血,遷延する黄疸および肝機能障害}.(4)予後:死亡例は胃食道静脈瘤からの出血例 1 例,他は全例生存.(5)PA存在の予測:(a)発症から診断確定までの期間:1 例で長期間(0.48年)を要した.診断確定前にAPの存在が示唆される異常検査所見として,γGTPおよびPTINRの上昇,血小板低値などがあった(診断確定前平均2.47年).【結論】CHD合併APはCHD自体の影響もあり,その臨床像は多様である.症状出現前より疑わしい所見が出現しており,日常診療にてその存在の可能性を疑い,早期診断に努める必要がある.

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