B-I-13
動脈圧波形をもとにした連続的心拍出量測定法の小児への応用の妥当性
埼玉医科大学小児心臓科
熊谷晋一郎,先崎秀明,熊倉理恵,岩本洋一,杉本昌也,石戸博隆,増谷 聡,松永 保,竹田津未生,小林俊樹

【はじめに】近年,末梢動脈圧波形のみから,心拍出量を連続的に推定する方法が実用化され始めた(LiDCo社製PulseCOシステム).動脈ラインが挿入されている患者においては,その圧波形だけから心拍出量の変化を連続的にモニターでき,臨床上非常に有用な可能性があるが,この方法は,多くの仮定のもとに成立し,その多くは成人のデータに基づいて得られたものである.したがって,小児や新生児に応用可能かは不明であり,今回その妥当性について検討した.【方法】まず,心臓カテーテル検査時に上行大動脈の圧と流速をモニターし,下大静脈閉塞,心房pacing,およびドブタミン負荷における心拍出量変化を,PulseCOシステムが測定可能かを検証した.さらに,PICU,NICUにおいて動脈圧ラインが挿入されている患者(先天性心疾患 7 例,心疾患以外 2 例)において,経胸壁心臓超音波で測定した心拍出量をreferenceにして上記システムの妥当性を検討した.【結果】PulseCOシステムは,下大静脈閉塞中の心拍出量低下をbeat by beatで追随したが,絶対量において実測流量との間に 7 ± 2%の誤差を生じた.心房ペーシング中は,実測値と良い相関を示したが(r = 0.88),ドブタミン負荷においては最大40%の誤差を生じた.PICU,NICUの患者においてはreferenceと比較的良い相関を示したが(r = 0.84),なおもばらつきがあり,症例により補正の必要性を示唆した.【考察】小児においては中心から末梢への圧伝達関係や,圧伝播速度と特性抵抗の関係が,種々の要因で成人とは異なる可能性がある.これらは,今回みられたPulseCOシステムによる測定誤差の原因になりうると考えられる.今後症例を増し,これらの要因に与える因子の検討とそれによる補正の導入により,より正確な心拍出量推定ができる可能性があり,PulseCOシステムはその簡便性と情報量の多さから,小児循環管理の向上に大きく貢献すると思われた.

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