K-II-1
Ross手術の適応
東京女子医科大学心臓血管外科
松村剛毅,新岡俊治,長津正芳,石山雅邦,森嶋克昌,岡村 達,小坂由道,山本 昇,小沼武司,黒澤博身

【背景】当科においては特に乳幼児,小児例の大動脈弁疾患に対してのみならず,成人例などに対してもauto-tissue repair,drug freeを目指し,積極的にRoss手術を導入している.【Ross手術適応例】1996年 3 月~2005年 1 月に行ったRoss手術総数は56例(手術時平均13.8 ± 9.83歳(1~39歳)で,男女比は40/16である.手術時の診断は,ASR 30,AS 8,AR 15(うちrheumatic 1),AVR後malfunction 1,IE 3(うちPVE 1),SAS 1,VSD 1 例と大動脈弁疾患以外の症例も適応となっている.大動脈弁の形態は,2 尖弁が19/36,1 尖弁が 1/36例であり,2 尖弁症例に対しても積極的に行っている.13例に先行手術(正中切開 9 例)があり,palliation 6,open commissurotomy 4,ICR 4,AVR 2,その他 2 例である.【手術成績】平均観察期間は4.1 ± 2.5年である.遠隔期に心不全にて 1 例失った.再手術症例は 4 例.弁輪拡大によるARを 2 例(手術時 3 歳,12歳)に認め,1 例は術4.8年後にKonnoを,もう 1 例は術6.5年後にAVRを行った.1 例(手術時 9 歳)は術後早期(0.2年後)にsevere ARを認めAVRを行った.以上 3 例は大動脈 2 尖弁症例である.1 例(手術時 6 歳)は術後早期に右心不全を来しre-RVOTR(0.1年後)を行った.右心系のPS/RVOTSに対するPTAは 3 例(4 回)に行った.5 年生存率,および再手術回避率はそれぞれ98.0%,91.9%(Kaplan-Meier)である.【まとめ】現時点での手術成績は良好と考えられる.小児症例における機械弁置換を回避するためのRoss手術の位置づけは,たとえ 2 尖弁症例であっても大きいと考えている(絶対的適応)が,その経過観察は重要である.生体弁や機械弁の選択の余地のある症例(成人例)の適応はQOLを目指す目的において相対的適応と考えている.右心系の再建は,特に1度正中切開を行った症例にhomograftの導入などを開始したが,遠隔期での問題もあり,より良い弁付き導管の早期開発が望まれる.

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