C-I-20
透析用針を応用した小児用handcrafted aortic root cannulaの圧損特性について
山梨大学医学部第二外科1),山梨大学医学部付属病院MEセンター2)
石川成津矢1),鈴木章司1),樋口浩二2),本田義博1),本橋慎也1),井上秀範1),松本雅彦1)

【背景】心筋保護液注入や大動脈遮断解除後のair抜きに用いるaortic root cannulaは常用される医療器具であるが,小児用の小口径製品には満足すべきものは少ない.われわれは透析用の側孔付留置針を用いて独自にcannulaを作成し,新生児から学童までの開心術において広く使用し良好な結果を得てきた.その圧損特性について検討したので報告する.【cannulaの作成と使用方法】メディキット社製の透析用針クランプキャスに 3 号ネラトンカテーテルを側孔を塞がないように被覆し,19G針の場合は絹糸で固定し,17G針は固定せずに作成した.新生児から乳幼児では19G針を,学童では17G針を使用した.cannulation時にはクランプキャスのsoft tube部にペアンをかけて遮断し,回路との接続には三方活栓を間置させることでair抜きに用いた.【対象と方法】T社の静脈留置用針,M社の大動脈ルートカニューレのスタンダードチップと小児用ルートカニューレ(すべて18G針に統一)を比較対象とした.ローラーポンプと熱交換器付きの回路を水充填し,回路内圧を測定した.またroot cannula先端は水中とした.cannulaを付けずに計測した回路内圧から各回転数における回路特性値を求め,各cannulaを装着し計測した回路内圧から回路特性値を引いたものを圧損特性値とした.【結果】すべての回転数領域で,当院のcannulaが最も低い圧損特性値を示した.仮に18G針を用いて,安全回路内圧を40mmHg,注入量を体重の 5 倍(ml/min)と仮定すると,M社のスタンダードチップ,小児用ルートカニューレ,当院のcannulaは各26kg,28kg,32kgまでの症例に使用可能で,実際に使用している17G針,19G針では,各40kg,21kgまで使用可能であることが示された.【結語】われわれの考案したaortic root cannulaは廉価で短時間に作成でき,心筋保護液回路との接続が容易なだけでなく,市販の製品にも優る圧損特性を備えていることが明らかとなった.

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