K-III-4
KCNQ1遺伝子変異が同定された小児先天性QT延長症候群の臨床像の検討
島根大学医学部小児科1),市立岸和田市民病院小児科2)
安田謙二1),石崎 茜2),林 丈二1)

【背景】小児領域で遺伝子変異の同定された先天性QT延長症候群(LQT)症例の臨床像の報告は少ない.【目的】遺伝子変異の証明された小児LQT1症例の臨床像を検討し,その特徴を明らかにすること.【対象と方法】KCNQ1遺伝子変異が同定された 6 家系 8 例〔男 2 例,女 6 例,7.7 ± 1.5歳(range 6.4~9.7)〕.診療録より既往歴,合併症,家族歴,安静時心電図,Holter心電図〔実施時年齢8.0 ± 1.5歳(6.6~9.7)〕,トレッドミルによる運動負荷心電図(Ex)〔実施時年齢8.5 ± 2.5歳(6.4~13.2)〕を後方視的に検討した.遺伝子解析は,末梢リンパ球から抽出したゲノムDNAを用いて,direct sequence法で行った.【結果】同定された遺伝子変異の種類はmissense mutation 5 家系 7 例,frameshift mutation 1 家系 1 例であった.既往歴ではsyncopeが 2 例(25%)に,無熱性痙攣が 1 例(13%)にみられた.合併症は脳波異常を伴う慢性硬膜下水腫(あるいはクモ膜嚢胞)が 1 例にみられた.家族歴では 5 家系 6 例(75%)にLQTで精査/投薬されたり,突然死,syncopeの既往がみられた.安静時心電図では 7 例でQTcは450以上あったが,心拍数が51/分の徐脈の症例では419と短かった.HolterやExで,TWAやcouplet以上か多形性のPVCがとらえられた症例はなかった.Exで最大心拍数 × 100/(220 - 年齢)は79 ± 3%(75~81)と運動時心拍応答は不良であった.syncopeの既往,家族歴のあった 3 例でpropranololの内服が開始された.【まとめ】小児LQT1のスクリーニングとしてQTc≧ 450のcut offラインは有用と思われるが,徐脈の症例ではQTcを過小評価する可能性があり注意が必要である.またHolter心電図,Exでの不整脈検出率は低く,診断に際しては既往歴,家族歴の聴取が重要である.

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