D-I-15
成人期に川崎病による冠動脈障害が疑われた症例の臨床像
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
松尾真意1),津田悦子1),吉村真一郎1),濱道裕二1),塚野真也1),越後茂之1),北村惣一郎2)

川崎病は1967年に報告されたが,それ以前にも罹患した患者がいることが知られている.川崎病による冠動脈障害の長期予後において,成人期の経過を知ることは重要と考える.今回,われわれは当院を受診し川崎病による冠動脈障害が疑われた 6 人の成人例を経験したので,その臨床像について検討した.【結果】6 例とも男性であり,1947~1963年生まれで,5 例において 6 カ月~20歳時に川崎病を疑わせる既往がみられた.診断時の年齢は26~48歳で,診断の契機としては胸痛 2 例,全身倦怠感,失神 1 例,心電図異常 2 例,不明熱の既往 1 例であった.6 例ともに心室性の不整脈がみられ,持続性心室頻拍が 1 例(VT),非持続性心室頻拍(NSVT)が 2 例,心室性期外収縮が 3 例であった.冠動脈疾患のリスクファクターは,喫煙歴 4 例,高血圧 2 例,高脂血症 3 例,肥満(body mass index 25以上)3 例で糖尿病,耐糖能障害は認めなかった.安静時心電図では異常Q波が 3 例に,運動負荷心電図でST低下は 2 例にみられた.左心室駆出率は27%,35%,35%,41%と 4 例に低下がみられた.負荷心筋シンチグラムでは早期像で 6 例に灌流欠損,後期像で 3 例に再分布がみられた.冠動脈造影所見では,多枝病変 5 例,セグメント狭窄 6 例,石灰化を伴った冠動脈瘤 5 例であった.治療は冠動脈バイパス術が 3 例,うち 1 例は心機能低下が著しく心筋細胞移植の適応となった.VT,NSVTを認めた 2 例について,電気生理学的検査でVTが誘発され,植込み型除細動器挿入の適応となった.抗血栓療法では 6 例にアスピリン,うち 2 例にワーファリンを併用としている.ACE阻害薬は 2 例に,βブロッカーは 3 例に投与されていた.【まとめ】成人期に川崎病による冠動脈障害が疑われた症例は,狭心症,心筋梗塞を発症して胸痛のため発見される例もあるが,多枝病変で,無症候性に冠動脈閉塞を起こし,低心機能であった症例がVTを呈し発見される場合もあった.

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