D-I-20
川崎病の病原体は消化管から侵入するか─川崎病の消化管組織における合成抗体による抗原の検出─
横浜市北東部中核施設横浜労災病院小児科1),慶應義塾大学医学部小児科2)
三浦 大1),郡 建男1),山岸敬幸2)

【背景】川崎病の発症に感染症が関与する可能性は高いが,病原体の侵入経路と炎症の発生機序は明らかでない.Rowleyらは,以下の過程により川崎病の炎症が生じるという仮説を提唱している.(a)病原体が経気道性に侵入する,(b)IgA産生Bリンパ球などの増殖を促す,(c)病原体がマクロファージへの感染を介し血行性に冠動脈などの標的臓器に到達する,(d)標的臓器の組織で抗原抗体反応が起きる.川崎病では,胃腸炎・イレウスといった消化器症状が約 1/3 にみられる.また,消化管は,気道と同様,一般的な病原体が侵入し,IgAによる局所免疫反応が起きる部位である.そこで,川崎病関連抗原が,(1)経消化管性に侵入するか,(2)消化管の炎症に関与するか,につき検討した.【方法】川崎病剖検例の血管組織におけるIgAのα鎖遺伝子を解析し,CDR3 領域をコードするおもな塩基配列をもとにIgA抗体を合成した.この合成抗体を用い,急性期川崎病 7 例と対照 7 例の消化管剖検組織を対象に免疫組織染色を行った.【結果】川崎病:抗原は,消化管の炎症がないか軽微な 5 例では陰性で,炎症の著明な 2 例では陽性であった.1 例では,胃の粘膜固有層の細胞質内と結腸の漿膜に浸潤したマクロファージに抗原が検出された.他の 1 例では,回盲部でリンパ節の過形成がみられ,腸間膜リンパ節内に抗原が検出された.病原体の経消化管性の侵入部位である粘膜上皮・パイエル板では,いずれも抗原は陰性であった.抗原検出率は,気管支に比し(12/14;J Infect Dis 2004; 190: 856-865),消化管(2/7)では有意に低かった(p = 0.03).対照:全例抗原は陰性であった.【結論】本成績は,川崎病関連抗原が,(1)経消化管性ではなく経気道性に侵入し血行性に消化管に到達する,(2)消化管の炎症の発生に関与する,ことを示唆する.(共同研究者:Northwestern大学小児科,Anne H. Rowley)

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