D-I-25
川崎病に対するγグロブリン大量静注療法は血液粘度を増加させる
愛知医科大学医学部小児科学講座
馬場礼三,柴田敦子

【背景】各種疾患に対するγグロブリン大量静注療法には脳梗塞,心筋梗塞などの血栓症をまれに合併することがあるが,その原因は血中γグロブリン濃度の増加に伴う血液粘度の上昇であるといわれている.一方,川崎病患児に対するγグロブリン療法分割投与の前後では血液粘度の有意な変化を認めなかったという報告もあるが,現在一般化しつつある単回超大量療法が血液粘度に及ぼす影響については報告がない.【目的】川崎病患児に対するγグロブリン単回超大量療法の前後での全血および血漿粘度の変化を調べる.【方法】対象は2004年 1~12月に当科に入院し,γグロブリン単回超大量療法を受けた15例(男10名,女 5 例)を対象とした.平均年齢は2.1歳(SD = 1.8)であった.γグロブリンは 2g/kgの単回投与とした.初回投与病日は5.1日(SD = 1.9)であった.3 例は同量の追加投与を要した.γグロブリン投与前後に採血し,全血および血漿粘度を測定した.装置はBrookfield社製円錐・平板型粘度計(DV-1)を使用し,温度37℃,ずり速度 50回転/分で測定した.【結果】全血粘度は投与前後で2.98cP(SD = 0.43)から3.20 cP(SD = 0.44)に(p < 0.05),血漿粘度は1.13cP(SD = 0.05)から1.27cP(SD = 0.05)に(p < 0.01)増加した.血漿粘度は血漿IgG濃度と血漿総蛋白濃度と有意に相関した(r = 0.78および0.75,いずれもp < 0.01).【考察】γグロブリン単回超大量療法の前後で,全血および血漿粘度は増加した.本療法ではこれに留意し,血栓症が生じ得ることを念頭におかなければならない.

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