E-I-31
マウス胎仔の肺毛細血管形成過程におけるVEGF-VEGFRシグナルの関与(第 3 報)―Flk-1 およびFlt-1 の相補的関係とVEGF-Flk-1 シグナルの動脈分化への影響―
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学1),京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子能機能病理学2)
山元康敏1),白石 公1),戴  戴2),高松哲郎2),浜岡建城1)

【背景】われわれはこれまでに正常および病的肺血管床の形成メカニズムを解明する目的で,マウス胎仔肺の毛細血管新生過程におけるVEGF-VEGF receptorシグナルの検討を行ってきた.その結果,(1)肺血管形成過程は,stage I(血管内皮前駆細胞の出現),stage II(原始毛細血管網の形成),stage III(毛細血管網の腺房への再構築),stage IV(肺胞毛細血管網の完成),の 4 過程に分けられ,(2)VEGFはstage I~IVで肺胞上皮および間質細胞全体にびまん性に豊富に存在するのに対し,Flk-1 はstage I~ IIIの肺胞上皮周囲の間質細胞に,Flt-1はstage II~ IIIの肺胞上皮周囲の間質細胞におのおの限局して認められた.(3)Flk-1 の阻害で血管内皮細胞は増殖と分岐が抑制され,Flt-1 の阻害で内皮細胞では増殖と分岐は亢進した.今回はFlk-1 とFlt-1 のmRNA定量をreal-time PCRを用いて行い,両者の相互関係,さらに動脈分化への影響について検討した.【方法】胎仔肺の器官培養にアンチセンスDNAを用いたFlk-1,Flt-1 の機能阻害を行い,real-time PCRによるmRNAの定量を行った.両者の相補的な関係についても検討した.さらに動脈分化のマーカーであるephrinB2の免疫染色とPCR定量も行った.【結果】real-time PCRによるPECAM-1,Flk-1,Flt-1 のmRNAの定量では,これまでの免疫染色と相関した発現が確認された.Flk-1 の阻害ではFlt-1 に変化がみられなかったが,Flt-1 の阻害実験ではFlk-1 有意な発現増加が認められた.Flk-1 阻害でephrin B2 陽性の動脈lineage細胞は減少した.【結論】正常マウス胎仔肺の毛細血管形成にはFlk-1,およびFlt-1 により制御される原始血管網形成から組織化された肺毛細血管へのリモデリングが必須であった.特にFlt-1 がFlk-1 の発現を制御している可能性が示唆された.またFlk-1 は血管内皮細胞の動脈への分化にも関与することが示唆された.

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