E-I-34
成長ホルモン欠損ラットに対する成長ホルモンおよびインスリン様成長因子-1 投与の心臓に与える影響(第 2 報)
旭川医科大学小児科
梶野浩樹,津田尚也,真鍋博美,藤枝憲二

【背景】成長ホルモン(GH)とGHに依存して産生されるインスリン様成長因子(IGF)-1 は心構造と心機能の維持に必須と考えられている.しかし,それぞれの物質の心臓に対する直接作用はよく知られていない.【目的】GH欠損ラットにGHおよびIGF-1 を投与して,その効果の差を検討し,それぞれの心臓に対する作用を知る.【方法】16週齢のGH欠損ラットを生食群,GH群(3mg/kg/day),IGF-1 群(25mg/kg/day)の 3 群に分け(各n = 5),それらを 2 週間連日皮下注射した.経過中の体重,体長,心エコー(Aloka SSD-4000,linear probe UST-553: 10 MHz)時の左室内径,左室後壁厚,心拍数,血圧から,左室内径短縮率,平均左室周短縮速度,左室壁応力,体重補正心拍出量,そして投与終了後犠牲死時の体重補正心重量を 3 群間で比較した.【結果】GH群の体重と体長は生食群とIGF-1 群に比べて有意差をもって増加した〔最終体重 生食群128 ± 9(mean ± SD,g),GH群164 ± 14,IGF-1群128 ± 14,最終体長生食群159 ± 4(mm),GH群170 ± 5,IGF-1群160 ± 7〕.投与終了後,心拍数,体重補正心拍出量,体重補正心重量には 3 群間で差はなかった.有意差はなかったが左室内径短縮率と平均左室周短縮速度は生食 < GH < IGF-1,血圧は生食 > GH > IGF-1 という順であり,平均血圧で代用した左室壁応力は生食群7.6 ± 1.0(g/cm2),GH群6.2 ± 1.7,IGF-1群5.8 ± 1.1で,GH群とIGF-1 群が低値を示し,特にIGF-1 群と生食群との間に有意差があった.【結論】GH/IGF-1 は心パフォーマンスを向上させつつ壁応力を低減して心臓に対して保護的に作用する可能性がある.心筋への作用がGHの直接作用なのかIGF-1 の作用なのかは今後組織性状や生化学的検討を加えて明らかにしたい.

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