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当院における先天性心疾患術後の胸郭変形に対する胸骨矯正治療
東京慈恵会医科大学小児科1),東京慈恵会医科大学心臓外科2)
齋藤亮太1),藤原優子1),河内貞貴1),寺野和宏1),衛藤義勝1),井上天宏2),中村 賢2),黄 義浩2),松村洋高2),森田紀代造2)

【背景】近年の医療技術の進歩により,重症先天性心疾患の外科治療成績が向上した.それに伴い従来予後良好とされてきた疾患における低侵襲手術,投薬フリーを目指した治療方針の考案など術後の心機能だけではなく,患児のQOLを重視した治療方針および術後合併症に対するfollow upが注目されるようになってきている.胸骨正中切開法による手術を受けた患児における胸骨部膨隆を主とした胸郭変形は,術後合併症として数多く経験するものであり,その思春期・青年期における社会生活に与える影響は容易に想像のつくところである.当院では2002年より術後胸郭変形に対し胸骨変形防止プロテクタによる胸骨矯正を行っている.今回その治療効果について検討した.【対象】先天性心疾患に対し胸骨正中切開法による手術を受けた患児35名(参考として側開胸による手術を受けた患児 1 名).【基礎疾患】心室中隔欠損10名,ファロー四徴症10名,両大血管右室起始 5 名,房室中隔欠損 2 名,完全大血管転換 3 名,総肺静脈還流異常 2 名,修正大血管転換 1 名,純型肺動脈閉鎖 1 名,心房中隔欠損 1 名,動脈管開存 1 名であった.【評価方法】仰臥位での乳頭高(mamma;M),膨隆部高(top;T),および胸郭横径(width;W)を計測し,プロテクタ装着前後での各計測値およびT/M比,T/W比にて治療効果判定を行った.また家族および診察医による見た目の印象も効果判定の参考とした.【結果】プロテクタ装着前の胸郭変形の形態的特徴として,胸骨下部の膨隆を全例に認めた.プロテクタ装着開始後のT/M比,T/W比は低下傾向を示した.計測値の明らかな改善を認めない症例においても見た目には胸壁が偏平化するなど,治療効果を認める症例が散見された.【結語】先天性心疾患術後の胸郭変形に対する胸骨変形防止プロテクタを用いた胸骨矯正は有効な治療であり,患児のQOLを向上させるものと期待される.

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