P-I-A-2
小児における大動脈人工弁置換術の検討
国立循環器病センター心臓血管外科1),国立循環器病センター小児科2)
樋口貴宏1),鍵崎康治1),萩野生男1),石坂 透1),康 雅博1),越後茂之2),八木原俊克1)

【目的】小児期における大動脈人工弁置換術では,潜在的なpatient-prosthesis mismatchや,それによる心機能およびADLの低下が危惧される.そこで,当科における小児期大動脈人工弁置換術症例について,その成績を検討した.【対象】対象は1985~2004年の20年間に,12歳以下で大動脈人工弁置換術を施行した症例で,単心室型修復術症例を除く29例(手術時平均年齢6.7 ± 4.1歳)である.うち17例は弁輪拡大術(Konno手術)を併せて施行した.【結果】使用した人工弁輪径は,平均20.9(16~25)mmであった.弁輪拡大術非施行例(以下A群)では21.7(19~25)mm,弁輪拡大術施行例(以下B群)では20.3(16~25)mmであり,両群間に有意差を認めなかった(p = 0.138).また,大動脈弁病変はA群では全例ARであり,B群ではAS(術前平均PG = 53.4mmHg)が 9 例,ARが 8 例であった.原疾患は,A群ではTGA 5 例,TF 4 例,truncus 3 例.B群ではCoA complex 5 例,CAVC 3 例,congenital AS 2 例,DORV 2 例,その他が 5 例であった.平均観察期間は5.8 ± 5.4(0~15.8)年で,hospital deathはA群 2 例(LOS,sepsis),B群 2 例(LOS)であり,late deathはB群 1 例(術後15カ月の大動脈基部仮性瘤破裂)であった.再手術例は,A群の 1 例において術後のSASに対し再弁置換を行った.B群では大動脈基部の仮性瘤を生じた 1 例にhomograftによる再置換術を行い,感染性心内膜炎を発症した他の 1 例に再置換術を施行した.術後の抗凝固療法は基本的にwarfarin + dipyridamoleで行っており,血栓および出血による事故はなかった.survival rateは 1 年86.1%,5 年81.8%,10年81.8%であり,event free rateは 1 年82.6%,5 年74.1%,10年74.1%であった.【まとめ】弁輪拡大術を選択することにより,比較的良好な中期・遠隔期成績が得られているが,なお慎重な経過観察を要すると考えられる.

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