P-I-A-8
Situs inversus に対する二心室修復術施行例の検討
国立循環器病センター心臓血管外科1),国立循環器病センター小児科2)
日隈智憲1),鍵崎康治1),萩野生男1),石坂 透1),康 雅博1),越後茂之2),八木原俊克1)

【目的】situs inversus totalisは発生頻度が 1/10,000程度といわれ,症例報告はあるが,まとまった報告はされていない.二心室修復術を施行したsitus inversus(SI)症例の特徴,治療上の問題点を検討した.【対象】当院で1979年10月~2004年12月に二心室修復を施行した房室正位のSI 13例(dextrocardia 12例,levocardia 1 例)を対象とした.単心室修復例は除外した.診断は術前検査における心大血管および気管支形態で行い,術中の心耳形態でも確認した.疾患はASD,AVSD,TF,1 型TGA各 1 例,ASD + VSD,2 型TGA各 2 例,DORVが 5 例.対照群として同時期の同疾患でほぼ同体重かつ同術者により手術されたsitus solitas(SS)の症例を無作為に抽出した.手術時間,人工心肺時間,大動脈遮断時間,心電図,腹部臓器の位置,大動脈弓および予後を比較検討した.【結果】以下SI群 vs SS群:mean ± SD;p値を示す.手術時間(分)= 361 ± 133 vs 325 ± 108;p < 0.008,人工心肺時間(分)= 153 ± 70 vs 124 ± 52;p < 0.0003,大動脈遮断時間(分)= 78 ± 37 vs 58 ± 23;p < 0.001.疾患別の時間差はASD,TGAでは小さく,AVSD,TF,DORVで大きい傾向がみられた.心電図はP波の軸がほぼ45度でQRS波の軸は 1 型TGAとAVSDで約60度,その他は約100度とSI群とSS群で差がなかった.levocardiaを呈したSIの 1 例はSSのdextrocardiaのmirror imageであった.術後AV blockを呈した症例はなかった.胃泡と肝臓の位置はSI群では1例を除きすべて逆位であった.大動脈弓はSI群 vs SS群で右側が10例 vs 1 例,左側が 3 例 vs 12例.初期のAVSDの 1 例を術後早期にLOSにて亡くしたが,他の12例は健在である.対照群は全例生存している.【まとめ】当施設のSIの二心室修復症例13例について,同様の診断,手術を行ったSSを対照に検討を加えた.形態学的にはほぼmirror imageの構造を呈しており,SSと比較して若干の手術時間の延長が認められたが,同等の成績と予後が期待されると考えられた.

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