P-I-G-3
肺動脈性肺高血圧症に対する薬物治療
埼玉県立小児医療センター循環器科
星野健司,小川 潔,菱谷 隆,安藤達也,平田陽一郎,河井容子

【はじめに】小児肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する薬物療法には限界があるが,肺移植に至るまでの橋渡し,移植を回避しうる治療としてエポプロステノール持続静注・シルデナフィル経口投与,などがある.【対象】1983年 4 月以後当センターを受診したPAHの患児11例を対象とした.PAHの診断は,日本循環器学会の肺高血圧症治療ガイドラインに準じた.Down症候群などの染色体異常は今回の対象から除外し,先天性心疾患を有するがそれが肺高血圧症の原因と考えられない患児は対象とした.【経過】11例の診断時年齢は中央値12歳 7 カ月(3 カ月~15歳 1 カ月),男女比 2:9 であった.基礎疾患のない患児(PPH)が 6 例・先天性心疾患を有する患児が 5 例(心房中隔欠損 2 例・その他 3 例)であった.5 例が死亡,5 例は薬物治療中,1 例は内科へ転院となった.薬物療法は,抗凝固療法・強心剤・利尿剤以外にベラプロストナトリウム経口投与が 4 例,エポプロステノール持続静注が 4 例,シルデナフィル経口投与が 1 例(エポプロステノール持続投与の 1 例)であった.ベラプロストナトリウムを投与した 4 例中,1 例は心不全・呼吸不全が改善せずに死亡し(複合心疾患を有する 7 カ月女児),3 例は外来で経過観察中である.エポプロステノールを投与した 4 例中,1 例は開始直後に死亡し(7 歳の女児),1 例は心不全・呼吸不全が改善せずに死亡した(複合心疾患を有する10カ月女児).心房中隔欠損を合併する 6 歳女児(3 歳 1 カ月時に開始)は,持続療法開始後 2 年 9 カ月を経過し小康状態を保っている.基礎疾患を有しない17歳男児(12歳 9 カ月時に開始)は,持続療法開始後 4 年 2 カ月を経過し,喀血を繰り返すためシルデナフィル経口投与を開始し小康状態を保っている.【まとめ】PAHに対する薬物療法は,症例・使用方法により,肺移植に至るまでの橋渡しとしての効果が期待される.

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