P-I-G-7
極めてまれな染色体異常(19短腕部分トリソミー)に合併した肺高血圧症に対するsildenafilの使用経験
聖マリアンナ医科大学小児科
有馬正貴,都築慶光,後藤建次郎,麻生健太郎,栗原八千代,村野浩太郎

【はじめに】19短腕トリソミーは極めてまれな染色体異常でありこれまでの報告はわずか 4 例のみである.今回われわれはこの極めてまれな染色体異常に肺高血圧を合併し,その治療にsildenafilを用いた症例を経験した.sildenafilの効果と併せて報告する.【症例】2 歳女児.分娩歴:在胎23週ごろよりIUGRを指摘されていた.在胎37週 2 日体重1,368gで出生.NICU入院管理となる.外表奇形(眼間解離,耳介低位,耳介奇形など)を認めたため染色体検査を施行し19短腕部分トリソミーと判明した.人工呼吸器管理を日齢 1 まで行い,以後,数日間酸素を使用した.その後,慢性肺疾患に移行し在宅酸素療法導入となっている.心疾患については日齢 1 に心雑音に気付かれPDAと診断.インダシンを投与されたがPDAは完全には閉鎖しなかった.残存したPDAについては短絡量の少ないものと判断され,外来でフォローされていた.外来で施行されたUCGでPHの合併が疑われ生後10カ月,心臓カテーテル検査施行.結果,PHは重度(Rp 20.8U)でPDAは手術適応なしと判断され,beraprostの内服が開始された.その後,行われた胸部CTで肺胞発育遅延と思われる所見が得られた.2004年 7 月(患児 2 歳)気管支炎のため入院.酸素投与,抗生剤治療で軽快し,退院の日程を思案中であったが,7 月下旬より再び発熱が認められ,以後,急速にPHが進行した.人工呼吸器管理,beraprostの増量で対応したが効果はなく,sildenafilの内服を追加した.sildenafilは0.5mg/kg/dayから開始して徐々に増量したが効果は認められず,その後epoprostenol静注を追加した.その後PDAは一時的ではあるものの両方向性の流れとなった.しかし,その後のPHの進行を防げず死亡した.【結語】Ghofraniらはsildenafilの効果は肺で換気が良好に行われている部位でよく発現すると報告している.われわれの経験でも肺実質に広範囲の病変を有するPH例ではsildenafilの効果は乏しいという印象を得た.

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