P-I-G-8
原発性肺高血圧に対する心房中隔欠損作成の至適サイズ
国立循環器病センター小児科
山田 修,渡辺 健,宮崎 文,細田和孝,越後茂之

【背景】近年PGI2などより原発性肺高血圧(PPH)の予後が改善しているが不応例も少なからず存在する.不応例に対する移植治療はドナーの不足などから限られた症例にしか行われていない.PPHに対しアイゼンメンジャー症候群(ES)では生命予後は遙かに良好で,肺高血圧クリーゼの際にも右左短絡によって体血流が保たれるためと考えられる.またESの運動能はPPHより良好である.進行したPPHに心房中隔欠損(ASD)作成が症状を改善し,生命予後を改善するといわれているが,過大なASDは高度低酸素血症を来し末梢への酸素供給が低下することが危惧される.【目的】救命的処置としてPPHにASDを作成する際にどのようなサイズが血行動態的に望ましいかを数値シミュレーションにより検討する.【方法】循環系が以下の要素からなっていると想定する.(1)体静脈blood pool(SVBP)(2)右室(3)肺動脈系(4)肺静脈blood pool(PVBP)(5)左室(6)体動脈系.SVBP,PVBPは一定のコンプライアンスを有し,右室左室は可変弾性体とする.また以下のように仮定する(A)心房間シャント量はASDサイズと右房-左房間圧較差により決定される.(B)心房中隔欠損作成前後で,各要素の特性は変化しない.(C)心室中隔を介する影響は考慮しない.【結果】右房圧が左房圧を凌駕している場合どのような初期値からでもASD作成により右左短絡が生じ,右左短絡の大きさに応じ(1)左室拍出(LVSV)は一様に増加し(2)動脈血酸素飽和度(Asat)は一様に低下することが示された.LVSVとAsatの積として算出される酸素脈は組織への酸素供給の指標であるが,これは右左短絡の増加に伴い最初は増加するがその後減少に転じることが示された.【結語】組織への酸素供給の点から至適なASDサイズが算出可能であり,制限的BASの有用性が示唆される.

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