P-I-G-9
当院におけるRoss手術時の肺動脈再建法の現在の方針について
社会保険中京病院心臓血管外科1),社会保険中京病院小児循環器科2)
長谷川広樹1),櫻井 一1),加藤紀之1),澤木完成1),櫻井寛久1),杉浦純也1),松島正氣2),西川 浩2),加藤太一2)

【目的】Ross手術は小児先天性大動脈弁疾患に対しても,より術後のQOLの高い手術として普及してきた.しかし,Homograftの使用が限られる本邦では,右室流出路再建に工夫が必要である.当院では 4 例のRoss手術例に対し,2 種の方法で肺動脈を再建してきた.その現状と問題点を検討した.【方法】症例は,2002年 7 月からの 2 年間でRoss手術を行った 4 例.年齢は 7~18歳,体重は20~52kgであった.疾患はいずれも先天性大動脈弁狭窄で,1 例は再弁置換,1 例に右冠動脈閉塞に対して冠動脈バイパス術も行った.肺動脈の再建法は,初期の 2 例はGore-Tex人工血管にGore-Texシートで 3 弁を作製した導管を用い(径22,24mm),最近の 2 例はFreestyle弁(径21,23mm)を用いた【結果】全例術後経過は良好で,PRは 0~I°,右室圧は25~50mmHg,右室流出路の最大圧較差は 4~15mmHgであった.術後観察期間は 2~26カ月で,現在まで有意なPS,PRは認めていない.【考察および結論】Gore-Texで作製した 1 弁付きパッチでも長期に弁の可動性が保たれている例が散見され,Gore-Tex 3 弁付き導管の予後も比較的良いものと推察される.一方,生体弁も抗石灰化処理や生理的固定化処理などの技術の進歩により,homograftに劣らない程度の弁の耐久性が期待できるものとなってきており,両者ともある程度長期の弁機能が期待できると思われる.Gore-Tex人工血管による導管では,小さいサイズでも対応が可能である反面,生理的なvalsalva洞がなく弁機能は生体弁より劣ると思われる.Freestyle弁は弁機能が良い反面,大動脈壁がGore-Tex人工血管より若干固めで,吻合に際し特に小児例では末梢肺動脈を圧迫しないようなデザインにする必要があると思われた.現時点では両者の優劣をつけがたいが,Freestyle弁で23mm以上入ればそちらを,入らなければGore-Tex人工血管を選択するのが現在の方針である.さらに今後,中長期の遠隔成績を慎重にみていく方針である.

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