P-I-G-10
浅側頭動脈からの大動脈造影が診断に有用であったaortic atresia,hypoplastic ascending aorta,VSD,left PDA,CoA,isolation of right SCA with right PDAの 1 例
日野市立病院小児科1),東京都立八王子小児病院心臓血管外科2),東京都立八王子小児病院新生児科3)
池上博彦1),厚美直孝2),安井孝二郎3)

【はじめに】総動脈幹遺残(Van Praagh 分類 A4)との鑑別診断に苦慮し,浅側頭動脈からの大動脈造影が診断に有用であったaortic atresia,hypoplastic ascending aorta,VSD,left PDA,CoA,isolation of right SCA with right PDAの 1 例を経験したので報告する.【症例】患児は在胎40週 1 日3,299gで他院にて出生し,日齢 1 に総動脈幹遺残の診断で東京都立八王子小児病院に収容となった.ductal shockは認めずlipo-PGE1 投与により血行動態の安定は得られ,診断目的に右橈骨動脈からの造影を実施した.しかし,右鎖骨下動脈は総動脈幹と考えられた血管より直接分枝し,隣接する右肺動脈に造影剤は流れ大動脈とその分枝は造影されなかった.このためカテーテルにより心室経由で造影を実施したところ狭小な上行大動脈の存在が疑われるに至った.心エコーにてもその存在は確認できたが,左橈骨動脈からの造影ではCoAのため中枢側の造影所見は得られず,22G留置針を用いて用手的に浅側頭動脈から大動脈造影を実施することで診断確定に足る所見が得られた.その後は日齢24に肺血流量増加に対して姑息術として両側肺動脈絞扼を施行し,術後経過は順調で現在体重3,800gを超え大動脈再建に向けて待機中である.【考察】左心低形成症候群に至る大動脈弁の閉鎖や低形成のうち,4~7%にVSDが共存することで適正な僧帽弁と左心室の発育が認められるとの報告があり,本症例もその 1 例と考えられる.【結語】aortic atresia,hypoplastic ascending aorta,VSD,left PDA,CoA,isolation of right SCA with right PDAの 1 例を経験した.総動脈幹遺残(Van Praagh 分類 A4)との鑑別診断が重要で,心エコーでは狭小な上行大動脈の存在に注意する必要があった.診断確定には浅側頭動脈からの大動脈造影が有用であった.

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