P-I-G-11
当科における大動脈二尖弁症例の臨床的検討
長崎大学医学部歯学部付属病院小児科
山本浩一,大坪善数,岡崎 覚,本村秀樹,手島秀剛,森内浩幸

【背景】大動脈二尖弁の発生頻度は全人口の 1%程度と先天性の心構造異常では最も高いといわれている.その臨床経過は多岐にわたっており,生涯無症状の例も多い.しかし幼小児期は無症状で小児期後半から成人期以降に症状が出現し弁置換術を受ける例も少なくない.したがって小児期の診断時から生涯を見据えた経過観察が必要となる.【方法】今回当科で現在経過観察中の大動脈二尖弁の症例を後方視的に検討した.指標として神経体液性因子,心臓および頸動脈超音波検査の有用性を合わせて検討した.【結果】症例は10例で男性 4 例,女性 6 例であった.診断時年齢は4.8 ± 4.0歳でその後現在まで7.4 ± 5.8年間経過観察をしている.全例とも感染性心内膜炎の既往者,発症者はなかった.他の心合併症として 3 例に大動脈縮窄症を 1 例に大動脈離断症を認めた.大動脈縮窄症のうち 2 例はターナー症候群であり,1 例に高血圧の併発を認めた.超音波検査上二尖弁の性状は,前後型 6 例,左右型 1 例で不定型 3 例であった.全例明らかな石灰化は認めなかった.大動脈弁狭窄単独は 3 例,大動脈弁閉鎖不全単独は 4 例,狭窄兼閉鎖不全は 4 例であった.有症状者は大動脈弁閉鎖不全症の17歳女性例でNYHA 2 度の慢性心不全と考え本例のみに弁置換術(生体弁)を施行した.【考察】学童期での発見例が多く,学校健診での早期発見の有用性が示唆された.また一部の例を除き小児~青年期の経過観察中有意な悪化傾向は少なく,薬物治療およびRoss手術などの外科的治療介入を要していない.しかし今後,観察期間の延長とともに検査パラメータの悪化,心原性の症状出現が予想され,外科的療法の介入時期と成人循環器内科へのスムーズな移行が問題となる.超音波検査によるこまめな評価と感染性心内膜炎の危険も予測されるので予防教育が重要であると考えられた.

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