P-I-G-12
左室流出路狭窄および僧帽弁閉鎖不全症を伴った左室二腔症の 1 例
大垣市民病院胸部外科
六鹿雅登,玉木修治,横山幸房,横手 淳,石本直良,中島正彌

【はじめに】右室二腔症に比べ左室二腔症は非常にまれな疾患であり,現在までに数例の報告しか認められない.今回当院で左室流出路狭窄および僧帽弁閉鎖不全症を伴った左室二腔症の 1 例を経験したので報告する.【症例】14歳,女児.患児は,出生後他院にて心筋症を疑われた.9 歳時に肥大型心筋症を疑われ,βブロッカー(ミケラン10mg/分 2)の内服を開始した.13歳時,無症状ではあったが,再度心臓カテーテル検査を施行し,左室二腔症と診断された.左室内の圧較差は約50mmHgであった.14歳時より労作時胸痛を訴え,ミケラン15mg/分 3 に増量し,手術適応につき当院に紹介となった.安静入院とし,頭痛のためミケラン15mg/分 3 からセロケン40mg/分 2 に内服を変更した.症状が徐々に軽快したため精査をすすめ,3DCT,心臓超音波検査,心臓カテーテル検査に加え経皮的心筋中隔焼灼術(PTSMA)も考慮し,冠動脈造影検査も施行した.形態学的には,僧帽弁前尖乳頭筋レベルで左室のsinus portionとoutflow portionが湾曲しており,またその部位に狭窄部位を認めた.outflow portionは全く収縮に関与していなかった.狭窄部位に関与する冠動脈は対角枝であるが,対角枝は認めず,PTSMAは断念した.左室内圧較差は内服薬変更により40mmHgに減少した.僧帽弁の形態も通常ではなく,形成過程の異常と考えられ,後乳頭筋は認めるも,前乳頭筋は不明であった.また前尖の逸脱による僧帽弁閉鎖不全II度を認めた.手術方針としては僧帽弁置換および左室内狭窄解除術と考えたが,症状もセロケン60mg/分 3 に増量後安定していたこと,女児であり手術時期の検討が必要であったことにより内科的治療を優先した.【考察】本症例は文献検索の結果,今までに報告されていないタイプであり,発生学的には弁形成時の異常と考えられる.僧帽弁を温存した狭窄解除は困難であると考えられるが,形態学的にまれな症例であり症例を呈示した.

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