P-I-G-13
巨大心臓腫瘍を合併した左心低形成症候群 2 例の手術経験
順天堂大学医学部心臓血管外科1),順天堂大学医学部小児科2),福岡市立こども病院心臓血管外科3)
南  和1),川崎志保理1),明石浩和1),天野 篤1),秋元かつみ2),大久保又一2),稀代雅彦2),角 秀秋3)

【はじめに】心臓腫瘍を合併した左心低形成症候群(HLHS)に対する手術報告例は少ない.今回われわれは,巨大左室内腫瘍を合併したHLHS 2 例の手術を経験したので報告する.【症例】症例 1:体重2.1kg,女児.HLHS(AA,MS)に直径40mm大の左室内腫瘍を合併.生後10日,Norwood手術を施行し,右室肺動脈間に直径 5mmのePTFEグラフトを体肺シャントとして用いた.体外循環離脱時,低酸素血症を認め,シャント吻合部の右室心筋を切除し手術を終了した.しかし,ICU入室直後より再度著しい低酸素血症を来し,体外循環下にて直径 3mmのBTシャントを追加した.いったん改善を見たものの,低酸素血症の進行と循環動態の悪化のため,手術当日死亡した.剖検所見では巨大な左室腫瘍は右室腔内に突出し,このため右室肺動脈間のシャント血流が肺動脈へ流れない状況にあったと考えられた.症例 2:体重2.5kg,男児.AS,MS,hypo LVに直径30mm大の左室内腫瘍を合併していた.症例 1 の経験より,新生児期のNorwood手術は回避することとし,生後12日,両側肺動脈絞扼術を施行した.おのおののバンドの長さは10mmとし,SaO2は80%となった.生後 1 カ月,ASDが狭小化しBASを施行した.この間もプロスタグランディン製剤の点滴を継続した.生後2.5カ月,2.5kg時にグレン手術,DKS吻合術を施行した.手術終了時,CVP 14mmHg・SaO270%にて厳重な管理を要したが,その後改善を認め,術後 5 病日に抜管,術後60病日に退院し,現在TCPC待機中である.【結語】(1)巨大左室内腫瘍を合併した左心低形成症候群(HLHS)2 例に対する手術 2 例を経験した.(2)この症例に対する手術として,新生児期のNorwood手術よりも,両側肺動脈絞扼術後のNorwood・グレン手術が救命率の高い術式であると思われた.

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