P-I-G-14
左心低形成症候群(HLHS)を合併した46XX, der(9) t(5; 9) (q33.3; p22) の双胎例
富山医科薬科大学小児科
齋藤和由,伊藤秀和,渡辺綾佳,小川次郎,二谷 武,橋本郁夫,土肥善郎,大嶋義博,市田蕗子,宮脇利男

【はじめに】HLHSの原因関連遺伝子はこれまでもいくつか報告されている.今回われわれはHLHSを合併した染色体異常を伴う一卵性双生児の症例を経験したので報告する.【症例】自然妊娠,在胎37週 0 日にて出生の一卵性双胎児.出生体重は第一子2,060g,第二子1,834g.両児ともに出生直後より呼吸循環不全があり,左心低形成症候群(HLHS)と診断された.心エコー上,第一,二子ともにAS,MSで内膜の肥厚と収縮能の低下があり,左室は心内膜繊維弾性症が,右室は心筋緻密化障害(NC)が疑われた.第一子の上行大動脈径は第二子より細く重症であった.眼瞼斜下,眼裂狭小,両眼角開離,鞍鼻,耳介低位,高口蓋があり,第二子のみに軟口蓋裂の合併が認められた.染色体検査は両児とも46XX, der(9) t(5; 9) (q33.3; p22) で,9p部分モノソミーと 5q部分トリソミーの合併例であった.父親は46XY, t(5; 9) (q33.3; p22) の健康保因者であった.両児とも 9p症候群の特徴を認めず,5qトリソミーの特徴とされる眼瞼斜下,両眼角開離,耳介低位が認められたことより,本症例は 5qトリソミーの表現型に近いと思われた.治療方針としては心機能低下が著しい第一子に両側肺動脈絞扼術を,第二子にNorwood(RV-PA conduit)手術を施行した.第一子は心機能の改善なく生後 4 カ月に死亡し,第二子は手術直後,原因不明の血圧低下のため死亡.【考察】HLHSの合併例は 9p部分トリソミーでの報告はなく,5q部分トリソミーで 1 例に報告されているのみである.5q33-q34はdelta-sarcoglycanを発現し,delated cardiomyopathyとの関連が,5q34はNKX2-5 を発現し,ASD,HLHSとの関連が指摘されている.本症例では両児ともにHLHSを合併していることから,本染色体異常とHLHSとの関連性が強く疑われた.【結語】HLHSを合併した46XX, der(9) t(5; 9) (q33.3; p22) の双胎例を経験した.5qに局在する遺伝子がHLHS,NCなどの心疾患の発生に関与している可能性が強く疑われた.

閉じる