P-I-G-15
左心低形成症候群に対する心拍動下Norwood手術
福島県立医科大学医学部心臓血管外科
小野隆志,佐戸川弘之,黒澤博之,横山 斉

左心低形成症候群に対するmodified Norwood手術は近年著しい成績の向上が認められるもののいまだ満足のいくものでなく,術後の右室機能低下が経過に大きく影響する場合も少なくない.われわれは術中の心停止が少なからず右室機能低下をもたらすと考え最近の 2 例で違った方法での心拍動下Norwood手術を施行し良好な結果を得たので報告する.【症例 1】生後 8 日2.6kgの男児.上行大動脈(AAo)2mm,大動脈弁・僧帽弁閉鎖.腕頭動脈(BCA)に径 3mmのPTFE graftを吻合して送血路とし上下大静脈脱血で人工心肺開始後,横隔膜上で下行大動脈に送血カニューレを挿入し下半身灌流を行った.大動脈再建は下行大動脈と左総頸動脈,左鎖骨下動脈およびBCA末梢の大動脈弓を遮断して動脈管組織を切除しつつ大動脈弓部を切開し,脳・冠・下半身循環を保って大動脈弓と切断した肺動脈の直接吻合を開始し末梢側半分を吻合した.次いでBCA根部を遮断してBCA末梢の大動脈弓の遮断を解除後,大動脈弓の切開をAAoまで延長し,2.5mmのintracoronary shuntをBCAからAAoに挿入し,冠血流を維持したまま心拍動下に吻合を完成した.肺血流路は 6mmのPTFE graftでRV-PA conduitとした.【症例 2】生後12日2.8kgの男児.AAo最狭部4.5mm,大動脈弁・僧帽弁狭窄.補助手段は症例 1 とほぼ同様.大動脈弓と切断した肺動脈の直接吻合を心拍動下に施行しAAo拡大は行わなかった.肺血流路として 6mmのRV-PA conduitを作成した.2 例ともドパミン 5~10γで人工心肺から離脱.2 期的胸骨閉鎖,人工呼吸器離脱はそれぞれ,症例 1 で術後 7 日,14日,症例 2 で術後 3 日,4 日であり,術後心エコーでは術前と比較して右室収縮力の低下や三尖弁逆流の増悪を認めなかった.【結語】AAoの細い症例にはintracoronary shuntを利用して十分にAAo拡大を行い,AAoが十分に太い症例にはAAo拡大を行わない方法を使い分け,より安全に心拍動下Norwood手術を行うことが可能であった.

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