P-I-G-16
HLHSに対する両側肺動脈絞扼術後,数カ月後にNorwood手術 + 両方向性Glennを同時に施行した症例の検討
大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科1),大阪市立総合医療センター小児循環器内科2)
西垣恭一1,2),川平洋一1),上野高義1)

【目的】過去 1 年間の連続する 4 例のHLHSに対し,生直後に両側肺動脈絞扼術(B-PAB)を行い,数カ月の待機期間の後,両方向性Glenn(BDG)を同時に行うNorwood手術を施行した.今回この治療方針の妥当性と問題点につき検討した.【症例】過去 1 年間に当院に入院したHLHSは 4 例.来院時日齢は 0~2 日,体重は2,500~3,250g.診断は全例AA,MAであった.術前ショック状態であったのは 2 例で,入院当日に手術した 1 例を除く 3 例で術前窒素混入による低酸素吸入療法を行った.【結果】全例にB-PABを施行した.手術時日齢は 1~4 日.胸骨正中切開,テープ長さ10mm,幅 3mmのテフロンテープでB-PABを施行.SaO2は90%台から80%前後へと低下し,血行動態は速やかに安定.術後もlipo PGE1を持続投与した.生後86~105日(平均91日)で心臓カテーテル検査施行.Qp/Qs 0.7~1.3(平均0.98),PA平均圧14~28(平均21.5)mmHg,PAI 150~359(209)であった.Norwood + BDG手術:生後100~130(平均118)日目に施行.手術時体重は4.4~5.3(平均4.9)kg.Norwoodの大動脈再建には馬心膜パッチを補填した.また左右PAには 1 例を除き自己心膜パッチ拡大を要した.同時にBDG吻合を施行.1 例はhypoxiaにより術中死亡した.他の 3 例は体外循環からの離脱は容易でSVC圧は14~17mmHg,体血圧は80mmHg以上.利尿は十分で,一期的に閉胸し得た.1 例が術後 3 日目に突然hypoxiaとなり術後20日目に死亡した.剖検によりPA内血栓を認めた.耐術 2 例は経過良好で退院し,Fontan待機中である.【まとめ】(1)B-PABにより全身状態は速やかに安定するので,可及的早期に施行すべきである.(2)BDG可能であれば安定した術後経過が期待できる.(3)肺動脈にパッチ拡大した例では血栓の形成に厳重な注意が必要である.

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