P-I-A-12
肺動脈弁閉鎖不全の心機能評価─組織パルスドプラ法を用いて─
山梨大学医学部小児科
戸田孝子,杉山 央,星合美奈子,丹 哲士,小泉敬一,中澤眞平

重度肺動脈弁閉鎖不全を合併する患児において右室容量負荷による心室性不整脈や突然死が問題となっているが,右心機能の非侵襲的評価法は確立していない.一方,組織パルスドプラ法での壁運動速度は収縮・拡張機能の指標となることが報告されており,本法を用いて肺動脈弁閉鎖不全の心機能を評価した.【方法】対象は中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全を有する症例(PR群)12例,年齢7.2 ± 3.7歳.基礎疾患はFallot四徴術後 4 例,Rastelli型手術術後 5 例,肺動弁狭窄術後 2 例,無手術肺動脈弁閉鎖不全 1 例であった.組織パルスドプラ法を用いて,心尖部四腔断面像より右室自由壁,心室中隔,左室自由壁弁輪部での拡張早期波(Ea波),心房収縮波(Aa波),収縮期波(Sa波),等容性収縮期心筋速度(IVV),等容性収縮期心筋加速度(IVA)を測定した.組織パルスドプラ法にて,それぞれの部位でのTei indexを計測した.またパルスドプラ法を用いて左室流入血流拡張早期波(E波),心房収縮波(A波)を測定した.右室容量負荷を有さないコントロール10例と比較した.【結果】右室自由壁弁輪部Sa波はPR群9.1 ± 2.3cm/sec,コントロール群12.5 ± 2.9cm/secでありPR群で低かった(p < 0.01).また右室自由壁弁輪部IVVはPR群5.1 ± 2.6cm/sec,コントロール群7.8 ± 3.4cm/secとPR群で低かった(p < 0.05).Ea,Aa,IVAに差はなかった. 左室自由壁,心室中隔弁輪部ではSa波,Ea波,Aa波,IVV,IVAとも両群に差はなかった.また,左室拡張能の指標とされるE/Eaは 2 群で差は認めなかった.パルス組織ドプラ計測したTei indexは 2 群で差を認めなかった.【まとめ】中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全を有する症例では,右室組織パルスドプラで収縮波,等容性収縮期心筋速度の低下を認め,右室収縮能の低下が示唆された.組織パルスドプラ法は右室機能評価に有用である.

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