P-I-A-15
小児左房粘液腫の診断─リアルタイム 3Dエコー法による検討─
あかね会土谷総合病院小児科1),あかね会土谷総合病院心臓血管外科2)
古井 潤1),下薗彩子1),脇 千明1),山田和紀2),望月高明2)

【背景】小児心臓粘液腫は小児期の全心臓腫瘍の 5~10%程度といわれており,比較的まれな腫瘍である.心臓内であればどこにでも発生しうることより症状が多彩である.リアルタイム 3Dエコー(RT3D)を診断に用いた小児期心臓粘液腫の報告は今のところ皆無である.【目的】RT3Dを用いることにより左房粘液腫の診断および腫瘍の形態と運動の評価に有用か検討した.【方法】対象は 8 歳女児の左房粘液腫患児を両親の承諾を得たうえで被験者とした.使用した機器はPhilips社製SONOS7500,プローブはMatrix array transducer X4プローブ(4~2MHz)を用いた.【症例】8 歳,女児.学校での運動後に突然の頭痛と右上肢の片麻痺が一過性に出現,心エコー図にて左房内腫瘍を指摘され当科入院となった.入院後,2Dエコーにて精査したところ,腫瘍の付着部は左房内心房中隔で腫瘍の径は30mmであった.RT3Dを用いて腫瘍を経胸壁的に観察したところ腫瘍は可動性に富み,収縮期には左心房にそして拡張期には左心室へ移動する振子様運動を呈していた,また僧帽弁通過時は腫瘍がその内径のほとんどを占めていたが嵌頓は認めなかった.しかしながらRT3Dでは腫瘍の付着部の同定は困難であった.ドプラ法による左室流入平均圧較差(左房圧に相当)は5.9mmHgと軽度上昇していた.TIAの精査のため頭部MRI施行したが異常所見は認めなかった.TIAの既往および腫瘍塞栓の危険性があるため14病日に腫瘍摘出術を施行,病理学的に粘液腫と診断された.術後10日後には左室流入平均圧較差は正常化した.【考察】従来の 2Dエコーではリアルタイムで粘液腫の動きと心内構造の立体構造の可視化は不可能であった.しかしながらRT3Dを用いることで粘液腫のダイナミックな運動が観察可能となりさらに精度の高い診断が可能となったと考えられる.

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