P-I-A-16
胎児における右室圧計測
秋田大学医学部小児科
青木三枝子,原田健二,田村真通,豊野学朋,石井治佳,島田俊亮

【背景】心機能評価のために血圧,心拍数測定は不可欠である.胎児心エコー検査が広く行われ胎児心機能評価が行われているが,非侵襲的手技による胎児血圧の正常値は知られていない.われわれは1996年から胎児右室圧を知るべく胎児三尖弁閉鎖(TR)の検出を試みてきた.【目的】胎児心エコー検査により胎児の正常右室圧を推定すること.【方法】対象は1996年から胎児心エコー検査を行い,TRが認められ,かつ胎児期および出生後の心エコー検査で心奇形および不整脈,心機能異常が認められなかった正常胎児12例.Aloka社製SSD-prosound 5500および6500を用いて胎児心エコー検査を行い,カラードプラ法およびパルスドプラ法によりTRを検出し,最大速度(V)を計測した.TR波形が60msec以上検出されたものについて,その最大血流速度から簡易ベルヌーイ法を用いて胎児右室圧(4V2)を推定した.上記の検査の内容と目的を母親に説明し,同意を得た.【結果】1996年以来心エコー検査を行った胎児のうち,在胎23~39週の胎児計12例においてTRが検出された.検出率は約 4%と低かった.TRのある胎児では動脈管収縮や心拡大の所見はなく,生直後の心エコーでも有意な心形態異常は認められなかった.正常胎児平均在胎週数は31 ± 5 週で,その右室圧は15.3~42.3mmHgで平均25.4 ± 8.4mmHgであった.胎児の右室圧は在胎週数に伴い有意に増加した(y = 1.4 × -17.7,r = 0.76).【結語】胎児循環では右室優位であり,胎児心機能評価のために右室圧は不可欠である.ところが本研究で示したように正常胎児のTRの検出率は低く,胎児の正常右室圧の評価は困難である.胎児の心機能を評価は娩出時期の決定や予後の判断に不可欠で,今後多施設的にデータを蓄積し,わが国における胎児右室圧の正常データの確立が望まれる.

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