P-I-B-1
右腎動脈狭窄に下大静脈の閉塞を伴った線維性異形成(FMD)の 1 症例
市立枚方市民病院小児科1),大阪医科大学小児科2)
井上奈緒1,2),片山博視2),芦田 明2),森 保彦2),岸 勘太2),尾崎智康2),玉井 浩2)

【はじめに】小児の腎血管性高血圧の原因は線維筋性異形成(FMD)によるものが多い.FMDは全身の中小動脈に狭窄病変が生じる非炎症性の血管疾患で,静脈系に病変を来すことは極めてまれである.今回われわれは右腎動脈狭窄に下大静脈の閉塞を伴ったFMDの 1 例を経験したので報告する.【症例】4 歳男児.【現病歴】2004年 3 月,嘔吐,意識障害にて当院に搬送され入院となった.来院時,収縮期血圧が264mmHgと著明な高血圧を認めた.血液検査ではNa 124 mEq/l,K 3.6 mEq/l,レニン活性49.1ng/ml/h,ADH 30.7pg/mlであった.3DCTでは右腎動脈は描出されず,下大静脈は閉塞していた.以上より右腎動脈狭窄による腎血管性高血圧とhyponatremic-hypertensive syndromeと診断し,ニカルジピン,ベニジピン,エナラプリルにて血圧のコントロールを行った.保存的治療では高血圧,電解質異常は改善せず,経皮的腎動脈拡張術(PTRA)の適応と考え,大阪医科大学付属病院に転院となった.カテーテル検査では,下大静脈は両総骨静脈の合流部より完全に閉塞しており,腎動脈造影にて右腎動脈は高度の狭窄を認めた.右腎動脈にはガイドワイヤーも通過せずPTRAは不可能であると判断し,右腎摘出術を施行した.摘出した腎動脈の病理組織像から腎動脈狭窄の原因はFMDと診断された.術後は血圧,電解質異常はともに改善した.現在,アスピリンの内服で経過観察中である.【考察】本症例は静脈系にも閉塞病変を形成していたため,何らかの自己免疫性疾患や血液凝固異常の関与も考慮し精査したが,異常所見は認めず,摘出標本よりFMDと確定診断された.このように静脈系にも病変を形成するFMDは極めて珍しい.今後新たな病変を形成する可能性もあり,慎重な経過観察が必要である.

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