P-I-B-3
びまん性肺動静脈瘻および肺高血圧を伴った門脈下大静脈シャントの 1 例
大阪医科大学小児科
井上奈緒,片山博視,森 保彦,岸 勘太,尾崎智康,玉井 浩

【はじめに】今回われわれはびまん性肺動静脈瘻および肺高血圧を伴った門脈下大静脈シャントの 1 例を経験したので報告する.【症例】6 歳男児.【主訴】チアノーゼ.【家族歴】父が46歳時心筋梗塞で死亡.【現病歴】2001年脳膿瘍の診断にて市立枚方市民病院小児科にて入院加療を受けた.この時,低酸素血症があり肺動静脈瘻の存在が疑われた.退院後もSpO2は80%台であり,労作時呼吸困難も出現したため,2003年精査加療目的にて大阪医科大学付属病院に入院となった.身体所見では頬部と舌には毛細血管の拡張病変を認め,爪床にはチアノーゼがあり,両側四肢にはばち指を認めた.コントラストエコーでは,コントラスト剤が右房に出現した数拍後に左房にもコントラスト剤が出現し,肺動静脈瘻の存在が認められた.腹部血管エコー,造影CTでは門脈-下大静脈間にシャント血流を認めた.血中アンモニアは60~125γg/dlと正常から軽度上昇の範囲を変動していた.心臓カテーテル検査にて主肺動脈圧55/30(34)mmHg,肺血管抵抗は5.9単位・m2であった.左房の酸素飽和度は87.1%と低下していた.肺動脈造影では両側のびまん性肺動静脈瘻を認め,門脈下大静脈シャント造影では 3 本の異常血管を認めた.肺動静脈瘻に対しては経皮的コイル塞栓術を考慮していたが,病変がびまん性であったため,現在保存的治療にて経過観察している.【考察】原因として遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)などが考えられたが,現在のところ診断基準を満たしておらず,遺伝子診断を検討している.また,門脈圧亢進等に伴うhepatopulmonary syndromeと同様の病態で肺動静脈瘻や肺高血圧が惹起された可能性があり,門脈下大静脈シャントの閉塞を含めて治療法を検討中である.

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