P-I-B-4
先天性心疾患に合併した,無症候性の感染性心内膜炎の 2 症例
千葉県循環器病センター小児科1),千葉県循環器病センター心臓血管外科2),千葉県立東金病院小児科3)
川副泰隆1),立野 滋1),丹羽公一郎1),松尾浩三2),岡嶋良知3)

感染性心内膜炎は,罹病率,死亡率が高く,発症後は抗生物質の長期大量投与を必要とする.無症候性に経過し,陳旧性疣贅の摘出手術により診断した,感染性心内膜炎(IE)の先天性心疾患 2 症例を報告する.【症例 1】22歳女性,Fallot四徴症.3 歳時に心内修復術を施行し,4 歳,15歳時に肺動脈形成術を追加した.22歳時,術後評価目的の心臓カテーテル検査の際に,右肺動脈内腫瘤状陰影(有茎性,可動性),左肺動脈末梢性狭窄,中等度の肺動脈弁逆流(PR)を認め,手術適応と判断した.5 カ月前に38度の発熱を 1 日認めたが,無治療で解熱していた.手術は,右肺動脈内腫瘤の切除,右室流出路から左肺動脈までのパッチ拡大,肺動脈弁置換術(CEP 21mm)を施行した.腫瘤は,膠原線維と線維芽細胞の著明な増生からなる肉芽組織で形成され,毛細血管の新生とわずかな好中球浸潤を伴っていた.炎症の修復過程に合致する所見であり,細菌は証明されなかったが,IEによる疣贅と診断した.術後 6 カ月後にCNSによるIEを再発したが,抗生剤治療にて治癒した.【症例 2】1 歳 9 カ月男児,肺動脈弁狭窄症(PS),心房中隔欠損症(ASD).1 歳 2 カ月時,心エコー検査(UCG)でASDはほぼ閉鎖し,PSの圧較差(PG)が約60mmHgと推定されたため,経皮的弁形成術(PTV)を施行した.肺動脈は二尖弁であり,PTV(10mm × 2 のdouble balloon法)によりPGは40mmHgから24mmHgに改善した.術後 7 カ月の定期検診で初めて拡張期心雑音を聴取した.発熱は認めなかった.UCGで肺動脈弁に付着する腫瘤(9.5 × 9.5mm)と,中等度のPRが確認され,手術適応と判断した.手術は,肺動脈二尖弁の後尖に付着した腫瘤切除と,前方交連部切開・拡大術を施行した.腫瘤に認められた肉芽組織は症例 1 に比較して疎な構造であり,リンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を伴っていた.比較的最近の炎症の修復過程と考えられ,細菌は証明されなかったが,IEによる疣贅と診断した.

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