P-I-B-5
肥大型心筋症を呈した小児心サルコイドーシスの 1 例
広島大学医学部小児科
中田久美子,小西央郎

【はじめに】心サルコイドーシスは,刺激伝導障害,心不全,拡張型心筋症を呈するが,肥大型心筋症の報告は少ない.さらに小児心サルコイドーシスの報告はまれである.われわれは,乳児期発症の心サルコイドーシスを本学会で報告した.その後13年が経過し同例が肥大型心筋症を発症したのて報告する.【症例】14歳女児.生後 3 カ月全身性小丘疹で発症.13カ月に発熱,浮腫,リンパ節腫脹出現,リンパ節生検でサルコイドーシスと診断.1 歳 7 カ月,発熱,うっ血性心不全を発症し心サルコードーシスと診断,ステロイド剤で軽快した.3 歳頃より心筋壁肥厚が進行,発熱,発疹,関節炎等の寛解増悪によりステロイドの増減を繰り返した.7 歳,治療目的で自家骨髄移植施行.移植後高血圧持続しメトプロロール開始.10歳心不全症状再燃.LVDd 34.4mm,LVDs 17.8mm,IVSd 9.4mm,LVPWd 7.2mm,FS 46.2%と心室中隔の肥厚を認めた.右室心内膜生検で,心筋細胞の配列の乱れ,空胞変性,間質の線維化,小血管周囲リンパ球・組織球浸潤を認めた.14歳心不全症状再び増悪し,LVDd 28.3mm,LVDs 19.3mm,IVSd 11.1mm,LVPWd 7.84mm,FS 31.6 %と,心筋肥厚の増悪,左室内腔狭小化によるLOSを呈した.メトプロロール中止,亜硝酸剤を開始したところ症状が増悪したため,メトプロロール再開,亜硝酸剤中止,ステロイド剤投与により回復した.【考察】本例は,乳児期に心サルコイドーシスを発症,その後心筋肥厚が進行した.さらに心不全増悪時には左室の著明な拡張能障害を呈した.こうした所見はステロイド剤により改善し,心病変がサルコイドーシスの活動性に伴い寛解増悪したと考えられた.治療としてβブロッカー,ステロイド剤が重要であった.

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