P-I-B-6
Ewing肉腫に拡張型心筋症を合併していた 1 例
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学小児科2)
岩本洋一1),三浦信之2),小林俊樹1),先崎秀明1),松永 保1),竹田津未生1),石戸博隆1),杉本昌也1),熊谷晋一郎1),熊倉理恵1)

【背景】Ewing肉腫は骨原発の悪性腫瘍で組織起源に関し多くの検討がなされ,現在なお確立していないが,独立した疾患とみなされている.(11;22)転座があるEwing肉腫にIGF(insulin-like growth factor)-IのmRNAが発現していることが報告されている.またEwing肉腫の骨ないし骨髄転移が認められた患者群のIGF-Iの血中濃度が,転移が認められなかった患者群よりも有意に低い,との報告がある.一方,IGF-Iは心臓の特異的レセプターを持っており,心筋のリモデリングや変力作用を促進する働きを持つ.そして拡張型心筋症(DCM)の患者群では対照群に比しIGF-Iの血中濃度が低かったとの報告がある.しかし,Ewing肉腫とDCMとの関係は明らかにはされていない.【目的】今回われわれは,Ewing肉腫の治療前よりDCMが合併した14歳の男児を経験したので,文献的考察を加え報告する.【症例】14歳,男児.【現病歴】腹痛が出現したため,当院救急部を受診したところ腹部腫瘤が疑われ入院となった.入院時のX線で心拡大が認められ,心臓超音波にて拡張型心筋症と診断された.【入院後経過】心不全が認められたが,カテコラミン等の投与により改善された.その後,腹部腫瘤は生検によりEwing肉腫と確定診断された.MRI検査により,転移は認められず,抗癌剤治療が開始されたが,縮小傾向が認められず,手術摘出が施行された.腫瘍は骨盤原発であることが明らかとなった.現在,放射線治療と化学療法を併用しており,DCMに対する薬剤も内服のみでコントロールできている.【結語】IGF-Iに関する文献を加え本症例を検討する.

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