P-I-B-8
小児の生活習慣病予防は循環器疾患を予防するか
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児発達機能病態学1),鹿児島市医師会2),国立病院九州循環器病センター3)
吉永正夫1),島子敦史1),鮫島幸二2),西順一郎1),野村裕一1),吉川英樹3),田中裕治3),河野嘉文1),橋口 純2),清水信一郎2)

【背景】メタボリック症候群は肥満,高血圧,耐糖能異常,脂質異常を併せ持つ病態であるが,本態はインスリン抵抗性であると考えられている.【目的】鹿児島市で行われている生活習慣病予防検診を2003年,2004年の 2 回連続受診した児童を対象に,上記のリスクファクター数の減少した群を生活習慣病予防(二次予防)を行った群と仮定し,生活習慣病予防の及ぼす効果について検討する.【対象と方法】対象は小学生143名(男子90名,女子53名).リスクファクターとして,腹部肥満,高血圧,脂質異常(低HDLコレステロール血症または高中性脂肪血症のいずれか),耐糖能異常(空腹時血糖,空腹時インスリン値,HOMA指数のいずれか高値)の 4 個のうち,いくつを併せ持つか検討した.HOMA指数は空腹時血糖(mg/dl)× 空腹時インスリン値(γU/ml)÷ 405で求め,インスリン抵抗性の指標として用いた.検査値の異常値は報告されている日本人小児の90パーセンタイル値以上とした.2003~2004年の 1 年間にリスクファクター数が減少,不変,増加の 3 群に分け,各群の検査値の変化を検討した.【結果】143名の平均肥満度および平均リスクファクター数は2003年度が44 ± 11%,1.8 ± 1.1,2004年度が44 ± 13%,2.1 ± 0.9とリスクファクター数は有意に増加していた(p = 0.0011).リスクファクター数が減少あるいは増加すると,空腹時インスリン値・HOMA指数ともに有意に改善あるいは悪化していた(いずれもp < 0.0001).また,リスクファクター数が減少すると,腹部肥満と高血圧が改善し(いずれもp < 0.05),リスクファクター数が増加すると,脂質異常の有意な悪化がみられた(いずれもp < 0.01).【考察】小児期の生活習慣病の二次予防はインスリン抵抗性を著明に改善しており,将来の動脈硬化性疾患を予防する可能性が高い.小児の生活習慣病の一次,二次予防が成人期の循環器疾患を予防するか,早急な前方視的研究が必要である.

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