P-I-B-10
Head up tilting testを用いた血管迷走神経性失神の診断
群馬県立小児医療センター循環器科
鈴木尊裕,金井貴志,小林 徹,小林富男

【はじめに】神経調節性失神の範疇に含まれる失神において血管迷走神経性失神(以下,VVS)は最も多い.そして,1996年の米国心臓病学会の提案もあり,VVSの診断にはhead up tilting test(tilting test)が一般的に用いられている.【目的】失神を繰り返す患者におけるtilting testを用いたVVS診断の有用性を検討した.【対象および方法】失神を主訴に来院し,当センターで2000~2004年にtilting testを用いて検査を行った11例で,平均10.4歳(6~14歳)男子 7 例,女子 4 例を対象とした.tilting testは背臥位にて15分間の安静後に直立姿勢のまま自動的に70°まで足底板のついた台を傾斜させ,45分間心電図と血圧をモニタリングした.【結果】VVSと診断し得た患者は 4 例で,そのうち失神を来して検査を中止した患者は 2 例で,男子 1 例,女子 1 例であった.失神は認めなかったが検査後に徐脈を認めたり,検査中に嘔気を訴えた 2 例が強くVVSを疑われた.tilting testにおいて陽性または強く陽性が疑われた患者の内訳は,失神時の心拍数と血圧の反応による失神の分類を用いると混合型 2 例(男子 1 例,女子 1 例),心抑制型 2 例(男子 2 例),純血管抑制型 2 例(男子 1 例,女子 1 例)であった.強くVVSを疑われた症例は 2 例とも純血管抑制型であった.混合型の混合型および心抑制型の 4 例はα刺激薬,β遮断薬,ジソピラミド等を開始後に失神は認めていない.【まとめ】tilting testはVVSを診断するうえで有効と思われた.予後の良い疾患とされているが,いまだ小児領域では広く認知されるに至っていないが,原因不明の失神を繰り返し,病歴よりVVSが疑われた場合には有効と考えられた.

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