P-I-B-12
心疾患小児における外来でのBNPの有用性について
宮崎大学医学部小児科
大塚珠美,高木純一,久保尚美,佐藤潤一郎,小泉博彦

【はじめに】慢性心不全において,血漿BNP値は心事故や生命予後予測の指標として有用でありNYHA心機能分類を最もよく反映するといわれている.しかし小児領域での外来管理上の有用性についての報告は少ない.当科において,血漿BNP値を心不全の 1 指標として管理している11症例で計80回の測定を行った.症例は男児 6 例・女児 5 例,年齢 5 カ月~21歳 9 カ月,疾患群の内訳:チアノーゼ性心疾患 5 例(未治療 1 例,姑息術後 1 例,根治術後 3 例),弁性疾患 2 例(大動脈弁性狭窄,大動脈弁閉鎖不全),心筋疾患 3 例(拡張型心筋症 2 例,心内膜線維弾性症 1 例),原発性肺高血圧症 1 例である.この11症例のうち,慢性心不全の急性増悪を伴う 3 症例と急性増悪を認めない 8 症例との間でのBNP値より,入退院の適応,外来管理の有用性について検討した.【考察】慢性心不全の急性増悪を認める 3 症例は,(1)高度の肺高血圧にて根治術に至っていない右室性単心室・完全大血管転位(III),(2)右室性単心室,両方向性Glenn術,共通房室弁置換術後,(3)心内膜線維弾性症(大動脈縮窄術後)であり,基礎BNP値の高値が予測される.急性増悪を認めない 8 症例の外来でのBNP値の平均は82.5pg/mlであったのに対し,急性増悪を認める 3 症例の入院管理を要する際のBNP値は1,000pg/ml以上,抗心不全療法にて症状の改善がみられた退院前後に500~700pg/ml,以後外来で安定した状態で150~300pg/mlというデータを示す傾向があった.虚血性心疾患などの後天性疾患が多い成人領域では,慢性心不全における管理上のBNP値のcut offを200pg/ml前後に設定しているが,慢性心不全の急性増悪を認める小児でもほぼ同じ意味合いをもってくることが示唆された.小児においてもBNP値の変動は児の心不全状態を反映し,管理方針を決めるうえで有用な検査と考える.

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