P-I-C-1
小児循環器疾患に対する在宅酸素療法
秋田組合総合病院小児科
伊藤忠彦

【目的】在宅酸素療法(HOT)を導入した小児循環器疾患14例を対象に臨床的検討を行い,HOTの適応,効果,予後について考察する.【対象】対象は1994年以降,HOTを導入した循環器疾患14例.HOT開始年齢は 4 カ月から30歳,平均9.5歳,男 7 例,女 7 例.【方法】基礎疾患から以下の 3 群に分類し,HOTの導入目的,有効性,転帰を診療録を中心に調査した.1 群:先天性心疾患術後群(7 例;Fontan手術後 2,PDA 2,CoA 1,VSD + PDA + 左肺底動脈大動脈起始 1,TOF 1),2 群:先天性心疾患根治不能群(4 例;Eisenmenger症候群 2,肺動脈閉鎖 1,肺動脈低形成 1),3 群:その他(3 例;原発性肺高血圧 1,気管支肺低形成 + 続発性肺高血圧 1,軟骨無形成症 + 続発性肺高血圧 1).【結果】(1)HOT導入目的(症例によって複数):1・低酸素症の治療12例(86%,1 群 6,2 群 4,3 群 2),2・肺高血圧の治療10例(71%,1 群 5,2 群 2,3 群 3),3・喀血治療 2 例(14%,1 群 1,2 群 1),4・Fontan手術前後肺循環改善 1 例(1 群),5・Fontan手術後喘息発作による右心不全治療 1 例(1 群).(2)HOTの効果:1・HOTにより12例すべて酸素飽和度は上昇した.2・PH10例中 7 例(1 群 5,2 群 2)で肺動脈圧が正常化した.Eisenmenger症候群 2 例とPPH 1 例は不変.PHクリーゼを認めた 1 群 3 例はいずれも未熟児慢性肺障害を合併,3 例ともHOTでクリーゼ消失.3・喀血 2 例はHOTにより喀血は消失.4・Fontan手術前後の 1 例は肺循環改善しHOT離脱.5・Fontan術後の喘息発作による右心不全はHOT後消失.(3)転帰:HOT離脱 5 例(36%,1 群 4,3 群 1).【まとめ】先天性心疾患術後群に対するHOTの有効率は高く発育とともに離脱が期待できる.Eisenmenger症候群においてもSpO2上昇や喀血消失などの効果があった.また,軟骨無形成症などの心疾患以外による続発性PHにも有効でありHOTの適応疾患は多岐にわたる.

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