P-I-C-4
先天性心疾患における気道狭窄病変の呼吸生理学的評価(第 2 報)
埼玉県立小児医療センター循環器科1),埼玉県立小児医療センター心臓血管外科2)
菱谷 隆1),河井容子1),平田陽一郎1),安藤達也1),星野健司1),小川 潔1),山城理仁2),宇野吉雅2),野村耕司2),中村 譲2)

先天性心疾患に合併する気道狭窄病変の評価に有用な呼吸生理学的指標の検討をした.【方法】麻酔導入後またはICUにて,呼気気道抵抗(RAW),呼気時間(E),flow-volume(FV)曲線から50%呼気時の呼気流速と最大呼気流速(PEF)との比(V50)を測定した.また呼吸時定数をone compartment modelより導いた近似式〔呼気量(EV)とPEFとの比〕から計算した.【対象】(1)気道狭窄のない心疾患(control = C)群10例(年齢0.75 ± 0.69y,体重5.9 ± 2.5kg),(2)重症気道狭窄(S)群 7 例(0.79 ± 0.81y,5.6 ± 2.6kg).【検討項目】(1)EVを 5ml~15ml/kgまで変化させ,EVが各因子に与える影響を検討.(2)EV 8~10ml/kgに固定した時の10個の各因子平均を症例ごとに求め両群間で比較.(3)FV曲線の形と解剖所見との関連を検討.【結果】(1)両群とも体重(BW)の小さい例ではEVとRAWは負の相関.S群のみEVとV50は負の相関.両群ともにEVとEV/PEFまたはEとは正の相関,ただしC群の強相関に対してS群で相関弱~なし.(2)C群(値は省略)と比べてS群でRAW高値(= 280.39BW-0.552,p = 0.082),V50低値(= 0.57 ± 0.1,p = 0.0006),EV/PEF高値(= 0.8264BW ± 4.647,p = 0.024),E高値(= 0.0829BW ± 1.0059,p = 0.0008)となった.(3)狭窄を示唆するFV曲線は大きく 2 つのタイプ(呼気流量制限が呼気初期相から認めるものと,中間相から認めるもの)に分けられた.【結論】(1)気道狭窄例では狭窄部でのflow-restrictionのため,V50は低値であり,また換気量を増やすことでさらに低下した.また気道抵抗,呼吸時定数,呼気時間はすべて高値を示したが,気道抵抗については,体重が小さい例では換気量の影響が大きく,また狭窄のない例でも高値となり気道狭窄例との区別が難しかった.V50,呼吸時定数,呼気時間の 3 つが気道狭窄の評価のため優れた指標と思われた.(2)狭窄例でのFV曲線のタイプは換気量と気道狭窄の解剖学的形態(びまん性,限局性など)と関連していると推定された.

閉じる