P-I-C-5
先天性心疾患とRSウイルス感染症─パリビズマブ予防投与開始前の基礎データ─
東京都立清瀬小児病院循環器科
大木寛生,河野一樹,葭葉茂樹,菅谷明則,佐藤正昭

【目的】先天性心疾患(CHD)患児のRSウイルス感染症(RSV)は重症化しやすいとされ本邦でも今秋からパリビズマブ予防投与が可能となる.そこで当院における最近 3 年間のRSVの動向を把握しパリビズマブ予防投与開始前の基礎データとする.【方法】2002~2004年に当院に入院したRSV464例について後方視的に調査した.【成績】年齢分布は 1 歳未満225例(48.5%),1 歳以上 2 歳未満101例(21.8%),2 歳以上38例(29.7%).性別は男261例,女203例.CHD有群62例とCHD無群402例を比較した.入院日数(18.0:15.5),酸素投与日数(8.7:2.5),集中治療日数(6.3:3.3),人工呼吸器管理日数(4.7:0.5)で有意差を認め,CHD有群での重症化を確認した.また奇形症候群合併率(30.0%:1.7%),院内感染率(32.2%:5.4%)で有意差を認めた.年齢,性別,在胎週数,出生体重,同胞数,死亡率で有意差を認めなかった.CHD有群中肺高血圧を10例に認め,その有無で集中治療日数(18.7:3.7),人工呼吸器管理日数(11.4:3.3)で有意差を認めた.完全型心内膜症欠損,ダウン症候群,月齢 7,男児の 1 例のみ開心術後 3 日目にRSVが判明し急性呼吸窮迫症候群で死亡した.各年出生CHD新規登録患者のRSVによる入院率は2002年出生では 2 年間で12/50(24.0%),2003年出生では 1 年間で 4/34(11.7%)であった.【考案】内科的管理の向上,外科的治療のタイミング・術式への配慮などによりCHD患児のRSVの死亡率は抑制されたが,特に肺高血圧,奇形症候群合併例での重症化は回避できておらず,高率な院内感染率,術前スクリーニング検査の不確実性などの問題も残されていた.パリビズマブ予防投与による入院率,重症化率の低下に期待したい.

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