P-I-C-6
先天性心疾患を持つ児のRSウイルス感染症の実態
静岡県立こども病院循環器科
芳本 潤,満下紀恵,金 成海,鶴見文俊,原 茂登,伴由布子,田中靖彦,小野安生

【目的】RSウイルス感染は冬季に流行し,特に心疾患をもつ患児が罹患すると重症化しやすい.当科におけるRSウイルス感染の実態について検討を加えた.【対象】1999年12月~2005年 1 月にRS陽性で当科に入院もしくは入院中にRS陽性となった17人18例.【結果】月齢は中央値が15(1~46)カ月,基礎にある心疾患はVSDが 5 例(1 例21トリソミー),ECDが 4 例(全例21トリソミー),PAVSDが 3 例,HLHSが 2 例,DCMが 2 例,PPSが 1 例,TGAが 1 例であった.入院中に罹患した症例は18例中 6 例で,うち 2 例は外泊中に罹患している.半数は兄弟からの罹患が疑われる.根治後の症例は 9 例.発症時月齢の中央値は 8 カ月.多くは軽症で済んでいるが極低出生体重児でVSD術後肺高血圧があり,挿管呼吸管理を行った症例が 1 例ある.9 例中 4 例は根治後入院中にRSウイルス感染症に罹患している.根治前の症例は 9 例.発症時月齢の中央値は 3 カ月であった.2 例が入院中に罹患しており,1 例は手術のため入院したが罹患し延期.もう 1 例は姑息術後に罹患している.66%が同胞からの罹患が疑われる.4 例がRSウイルスに罹患し緊急搬送となっている.9 例中 4 例が挿管呼吸管理となっている.死亡例は 1 例.HLHSのグレン術後三尖弁・大動脈弁中等度逆流の症例が同胞からRSに罹患し細気管支炎は軽快したものの心不全のため死亡している.【考察】RSウイルスは感染力が強く,十分な予防策を講じなければ入院中の児に広まることも多い.根治前に罹患すると重症化しやすく死亡例もみられた.根治前の症例や姑息術後の症例ではパリビズマブの投与による予防策や十分な飛沫感染予防策,特に同胞からの感染に注意が必要である.

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