P-I-C-7
重度の呼吸不全でステロイドパルス療法を施行したファロー四徴,Down症候群の 2 例
近江八幡市民病院小児科1),滋賀医科大学小児科2)
奥野計寿人1),河原 敦1),岡本暢彦1),藤野英俊2),中川雅生2)

【はじめに】Down症候群における心疾患においては肺高血圧や易感染性による感染の遷延化を来しやすく,染色体異常のない先天性心疾患に比し心臓以外の問題を加味する必要がある.通常は高肺血流の疾患において肺高血圧や呼吸不全を合併することがよく知られているが,今回われわれは肺血流減少性疾患であるファロー四徴(以下TOF)で呼吸不全を来し,その管理に難渋しステロイドパルス療法を施行した 2 症例を経験したので報告する.【症例 1】8 カ月の男児,生後まもなくTOF,Down症候群と診断され,3 カ月時にチアノーゼが増悪し無酸素発作が出現したため他院でバルーン肺動脈弁拡大術を行った.8 カ月時に発熱した際,喘鳴とチアノーゼの増悪を認めて細気管支炎と診断され入院した.入院後,急激に多呼吸となり人工呼吸管理を行ったがCO2の貯留,アシドーシスが進行して循環動態が不安定となりステロイドパルス療法を行った.その後,無気肺を繰り返していたが呼吸状態は回復し 1 歳時に心内修復術を行った.【症例 2】日例 7 の男児,生後すぐにTOF,Down症候群と診断された.チアノーゼは軽度で哺乳状態も良好であったが日例 7 より多呼吸があり酸素投与が行われた.努力呼吸となりCO2の貯留が進んだために日例 9 で人工呼吸管理を開始した.その後も改善傾向がなくアシドーシスが進行したためにステロイドパルス療法を行った.いったん,血液ガス上の改善はみたが感染の合併に伴い極度の低酸素状態を繰り返した.虚血性脳症となり,現在も呼吸管理中である.両症例においてRSウイルスは検出されなかった.【まとめ】今回の 2 症例における呼吸障害の発症においては,Down症候群の児にみられる肺の組織学的な脆弱性や易感染性が大きな要因を占めていると考えられる.

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