P-I-C-8
急速な経過をとりPCPS管理となったPPHの治療経験
国立岩国医療センター小児科1),広島市立広島市民病院小児循環器科2)
高田啓介1),鎌田政博2)

【背景】原発性肺高血圧症(PPH)は予後不良の疾患であるが,経皮的心肺補助法(PCPS)を施行した症例の報告はまれである.【症例】低身長(-3.6SD),翼状短頸,耳介低位,多発性黒子,外反肘,眼間開離などの外表奇形はあるが,生来健康な10歳女児.小学 1 年時の心臓検診では異常を指摘されなかった.水泳中に胸部不快感を訴え失神.意識は回復したが,NYHA 4 度の状態となった.心エコーでは心奇形を認めなかったが,高度TRを伴い推定右室圧は120mmHg,BNP値は2,709pg/mlと著明に上昇していた.肺動脈血栓・塞栓症も考えMRI検査を行ったが,血栓形成を示唆する所見はなく,PPHと診断した.状態は安定せず心臓カテーテル検査待機のまま,酸素,利尿剤,ミルリノン,Ca拮抗剤,抗凝固剤を投与,入院 4 日目にはNO吸入療法(気管内挿管下)を開始した.しかしその後も尿量,血圧維持が困難となったため,5 日目にPCPSを装着,PGI2の持続静注を開始した.腎不全に対してはPCPS回路に透析回路を組み込み対処した.PGI2は鎖骨下静脈から投与し,数日で > 100ng/kg/minに増量したが,明らかな効果を認めなかった.また,PCPS脱血による負の影響を除くため,スワンガンツカテーテルを挿入し,PGI2を直接PA内へ投与したが変化はなかった.1 カ月以上を経過した現在,シルデナフィルも併用しているがPCPSからは離脱できていない.PCPS中の脳機能は,脳波,経頭蓋エコーにより評価した.【考察・結語】低心拍出量症候群に陥ってからのPGI2持続静注やNO吸入は効果が乏しく,特にPCPS装着下のPGI2によるコントロールは困難であった.本児は多発奇形を伴っており,PPHの発症に遺伝子異常の関与の可能性も考えられ,Leopard,Noonan症候群などに関して遺伝子検査中である.

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