P-I-C-10
塩酸ソタロール(sotalol)による治療を試みた多源性心房頻拍(MAT)を呈した新生児の 2 例
旭川厚生病院小児科
中右弘一,小久保雅代,梶野真弓,白井 勝,坂田 宏,沖 潤一

【はじめに】塩酸ソタロール(sotalol)は種々の上室性頻拍症に対して有効であり,最近小児での使用報告も散見される.最近われわれは器質的心疾患を有しない多源性心房頻拍を呈する新生児 2 例を経験し,その治療にsotalolを使用したのでその経過について報告する.【症例】症例 1 は 1 カ月の女児.1 カ月検診にて頻脈を指摘され精査および治療目的に入院した.心拍数200~250/分,入院後の心電図にて多源性心房頻拍(MAT)と診断した.digitalis投与にて一時的に洞性脈となったが,すぐに頻拍が再発した.flecainideおよびβ-blockerの内服を行ったが頻拍発作持続し,sotalolの内服を2.3mg/kg/日/分 2 にて開始した.内服治療開始翌日より頻拍発作は消失し,散発性のPACのみとなった.3.9mg/kg/日まで増量したところPACも完全に消失し,洞性整脈となった.退院時のQTc時間は0.42であった.症例 2 は日齢 9 の男児.胎児期に不整脈の指摘はなかったが,出生時より脈の不整に気付かれていた.哺乳および体重増加良好とのことで経過観察されていた.日齢 8 より心拍数が断続的に200/分を超える頻脈を認めるようになり,日齢 9 哺乳不良を認め当院NICUに入院した.心拍数200~300/分,入院後の心電図にてMATと診断した.sotalolの内服を2.0mg/kg/日/分 2 にて開始したが頻拍発作反復し,digitalisの併用にても効果なくsotalolを徐々に増量した.以降頻拍発作は軽減したもののPACは頻発していたため,flecainideの併用とともにsotalol 8.2mg/kg/日にまで増量したところ,PACも完全に消失した.退院時のQTcは0.43であった.【まとめ】新生児期発症のMATの報告はまれであり,抗不整脈薬の薬効についてまとまった検討をした報告はなく,その治療に難渋する例も存在する.今回われわれはsotalolを主体とする併用療法を行い,副作用なく良好なコントロールが得られた.新生児MATに対する治療手段としてsotalolは考慮されるべき薬剤であると考えた.

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