P-I-C-11
先天性僧帽弁閉鎖不全症術後に生じた心房頻拍focal ATの診断と治療にelectroanatomical mapping system(CARTO)が有用であった 1 症例
岩手医科大学附属循環器医療センター小児科1),岩手医科大学附属循環器医療センター第二内科2),岩手医科大学附属循環器医療センター心臓血管外科3),岩手医科大学附属循環器医療センター麻酔科4),弘前大学医学部保健学科5)
神崎 歩1),籏 義仁2),小山耕太郎1),高橋 信1),石原和明3),門崎 衛4),米坂 勧5)

【はじめに】先天性心疾患術後の上室性頻拍の多くは心房切開線の関与した心房頻拍(incisional AT)であると考えられているが,術後早期の小児例で不整脈基盤を解析した報告は少ない.術後にfocal ATを合併しまれな経過を取った 1 症例に対し,CARTOを用いて不整脈基盤の解析と治療が可能であったので報告する.【症例】1 歳 5 カ月の男児.生後28日,意識消失と痙攣を主訴に近医を受診した際に心雑音と心拡大を指摘され,先天性僧帽弁閉鎖不全症,WPW症候群(A型),PSVTと診断された.MRが進行したため当院へ紹介となった.入院時身長71cm,体重8.4kg,胸部X線上CTRは59%で肺うっ血を認め,ECGは洞調律でδ波は認めなかった.心エコー図検査ではLVDdは35.9mmと拡大しIV°のMRを認めた.全身麻酔下に初回臨床心臓電気生理学的検査(EPS)を施行した.左側壁の副伝導路(AP)とAVNRTを確認し,双方に対して焼灼術を行いAPは途絶した.AVNRTは直後は残存した.翌日弁輪縫縮およびedge-to-edge法(Alfieri法)により僧帽弁形成術を施行した.術後 7 日目に突然HR 200~230/minの上室性頻拍を再発した.当初はAVNRTの再発を疑ったが,術後12日目頃からはHR 220/min前後の持続するATとなった.頻拍時には数分以内に多汗,顔面蒼白で不機嫌となる傾向があり,抗不整脈薬抵抗性であったため,術後27日目に再度EPSを施行した.全身麻酔下CARTOを用いてAT中の両心房マッピングを行ったところ,僧帽弁輪縫縮術を行った付近の 2 カ所に自動能を有するfocusを確認した.両部位に対して焼灼術を行いATは停止した.前回残存したAVNRTは誘発されなかった.以後頻拍の再発は認めていない.【まとめ】本児のfocal ATの診断,治療に際しCARTOは非常に有用であった.僧帽弁輪部の手術操作と合致する部位での発症であり,今後も注意深い経過観察を要する.

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