P-I-C-12
3 回アブレーション治療を試みるも治療時に心室頻拍が誘発されず,その後突然死に至った 1 例
久留米大学医学部小児科1),聖マリア病院小児循環器科2),久留米大学医学部循環器内科3)
菅原洋子1),棚成嘉文2),大賀雅信3),岸本慎太郎1),籠手田雄介1),伊藤晋一1),工藤嘉公1),家村素史1),須田憲治1),松石豊次郎1)

小児の特発性心室頻拍(VT)の中でも右室流出路起源のVTは比較的予後良好の疾患と考えられているが,今回 3 回アブレーション治療を試みるもVTが誘発されず,その後突然死に至った例を経験したので報告する.症例は16歳女児.6 歳時に数十秒の痙攣を伴う失神発作が出現し,当院受診.脳波異常はなし.心エコーでは心奇形は認めず,ホルター心電図にてVTと診断した.発作時12誘導心電図にて下方軸 + 左脚ブロックを認め,右室流出路起源と判断した.propranololとmexiletineの内服により,以後失神は認めなかった.12歳時に再度失神を認め,救急車にて近医へ搬入.VTを認め,種々の抗不整脈薬を投与するもコントロールがつかないため,アブレーション治療目的で当院へ転院となった.しかし,治療前の心臓電気生理学検査の途中でVTが消失し,薬剤負荷を行ったがVTが誘発されず,治療を断念した.このためpropranololとsotalolの内服併用にて経過観察となった.その 3 カ月後に,症状を伴わないVTが出現し始めたため,アブレーション治療を 2 回試みたが,その際もVTが誘発できず治療ができなかった.心臓カテーテル検査後metopronolol内服へ変更.変更後のホルター心電図ではVTは認めなかった.その後 4 年間,ホルター心電図でもVT認めず,症状もないため,本児は内服を怠薬しがちであった.16歳時,睡眠中に呻き声を発した後強直性痙攣認め,救急車にて近医へ搬入された.搬入時心肺停止状態で,救命できなかった.予後良好と考えていた症例であったが,思春期に入り,症状もなかったため,服薬コンプライアンスを保つことが困難であった.失神の既往もあるこのような症例では,今後埋め込み型除細動器の移植も検討する必要があると考えた.

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