P-I-C-14
フレカイニドが有効であった心房性頻拍と心室性頻拍が混在した乳児例
宮崎大学医学部小児科
佐藤潤一郎,大塚珠美,久保尚美,高木純一

【背景】小児領域においてIc群に属するフレカイニドは,頻拍性不整脈に対する治療薬の一つである.乳児において,フレカイニドの血中濃度は,児の栄養状態に大きく影響されると報告されている.【症例】生後 3 カ月の女児.在胎39週 2 日2,334g帝王切開で出生し,妊娠・分娩および 1 カ月健診時に不整脈は指摘されなかった.3 カ月健診時に不整脈指摘され当科紹介となる.初診時,心房拍数175/分の異所性心房性頻拍と診断,また哺乳量低下・体重増加不良・陥没呼吸が認められ,胸部X線写真でCTR 57%,ANP 220pg/ml,BNP 92.6pg/mlから頻脈に起因する心不全と診断.入院後,ホルター心電図を施行,異所性心房性頻拍と心室応答の早い非持続性の心室性頻拍の混在を認めた.上室性頻拍ならびに心室性頻拍の合併例と考え,心不全症状を有するため,両頻拍治療目的としてフレカイニドを開始した.以前,われわれは胎児期よりフレカイニドで治療を行っていた児が肥厚性幽門狭窄症発症により低栄養状態となりフレカイニドの血中濃度上昇によると考えられるwide QRS tachycardiaが出現した症例を経験した.低栄養の進行が危惧された本児の場合,催不整脈の出現が予想されたため,十分な経管栄養を行ったうえで内服開始とした.フレカイニド開始後心房性頻拍は消失し,フレカイニド増量後心室性頻拍も消失した.ホルターECGでの不整脈の改善,心不全症状の消失ならびにANP・BNPの正常化を認め,フレカイニドによる催不整脈は認めず,また治療経過中フレカイニド血中濃度の急激な上昇は認めなかった.【結語】上室性頻拍と心室性頻拍を同時に認めた乳児例を経験し,両頻拍に対しフレカイニドは有用であった.乳児におけるフレカイニド投与に際し,十分な栄養管理を行うことが,より安全に使用できる点と考える.

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