P-I-C-15
ショックで緊急入院したtachycardia induced cardiomyopathyの 2 新生児例
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児発達機能病態学
江口太助,和田昭宏,福重寿郎,西順一郎,河野幸春,野村裕一,吉永正夫,河野嘉文

【症例】症例 1 は29生日,症例 2 は12生日.突然の哺乳不良,顔色不良に気づかれて近医を受診,受診時著明なアシドーシス(症例 1:pH6.86,症例 2:pH6.73),左室駆出率(EF)低下(20%前後)を認め,気管内挿管後当院ICUに入院.逸脱酵素上昇を認めた(AST/ALT/CK:症例 1;652/234/2,130,症例 2;383/181/952).2 例とも入院時は正常洞調律であったが,中心静脈確保時のガイドワイヤー刺激で上室発作性頻拍(PSVT)を来した.カテコラミン投与,アシドーシスの補正などの全身管理でいずれも12時間でEFは40%台へ改善した.全身状態改善,EF正常化後,鎮静解除とともにPSVT頻発するようになった.症例 1 は心電図上デルタ波がなく,ジゴキシンで効果なくフレカイニドが有効だった.症例 2 はデルタ波を認めプロプラノロールが有効だった.【考案】2 例とも胎児期の頻脈指摘もなく入院前日までの全身状態は良好だった.Gikonyo等はPSVTからショック・著明なアシドーシスを来した新生児 4 例(3 例がWPW症候群)を報告しているが,4 例とも入院時には洞調律だった.Dharnidharka等も同様の経過の 3 カ月児を報告し,アシドーシスや処置に伴う痛み刺激から入院時のPSVTがマスクされている可能性を述べている.今回の 2 例も入院時洞調律であったが,入院直後のガイドワイヤー刺激で発作を来しており,またアシドーシス改善後も長時間PSVTを来していない.ただ,状態が安定し鎮静剤を減量した後にPSVTの頻発がみられたことは興味深いことだった.新生児は頻脈による症状の把握が困難であり,また心予備能に乏しいためショックを来したものと考えられた.新生児ショックの原因の一つとしてPSVTは考慮すべき疾患であり,集中治療による循環呼吸管理で速やかな回復が期待できるものと思われた.

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