P-I-C-16
自律神経修飾の関与した心房内リエントリ頻拍に対しCARTO systemによる心内マッピングが有用であった女児例
宮崎大学医学部小児科
久保尚美,高木純一,佐藤潤一郎,大塚珠美,小泉博彦

【はじめに】心房内リエントリ頻拍(IART)はlong RP'を示す比較的まれな頻拍で,小児では基礎心疾患を有するものや心臓手術後の例がほとんどである.自動能亢進による心房頻拍との鑑別は,心電図のみでは困難である.【症例】14歳女児.3 歳時,上気道炎罹患時に不整脈を指摘され当科を受診.心電図でP波拍数150~200/min,伝導比率の変動する房室ブロックを伴う心房頻拍(AT)を認めた.心室拍数80~200/min,胸写上心拡大なく,心不全症状は認めなかった.心エコー図では両心房拡大,弁閉鎖不全を含め心内構造の異常は認めず,収縮能正常.ジゴキシンを開始したが,頻拍は停止せず,自覚症状および心不全症状を認めず中止.外来での心電図は,房室ブロックを伴うATとinappropriate sinus tachycardiaと思われる心電図が混在していたが,有意な症状の訴えはなかった.13歳時に運動時の動悸が出現.カテーテルアブレーションをふまえ電気生理学的検査にて,右房起源のIARTと診断.頻拍の起源は洞結節近傍と考えられたため,CARTOシステムにて最早期興奮部位を同定.アブレーション施行し,頻拍消失.アブレーション後の房室結節機能検査では高位右房頻回刺激にて110bpmでWenckebach AH blockを呈し,isoproterenol投与後Wenckebach pointは200bpmへ上昇.この結果より,安静時は迷走神経緊張状態にあり,房室伝導が抑制され心室拍数が低下,運動時など交感神経緊張下では,房室伝導比率が上昇し,心室拍数が増加するため動悸を自覚していた可能性が考えられた.心室拍数の適度な調節により,長期間のIART持続にもかかわらず頻脈誘発性心筋症を来さなかったと思われた.【結語】長期間持続するIARTの症例を経験した.カテーテルアブレーションにはCARTOシステムが有用であった.長期間の持続にもかかわらず頻脈誘発性心筋症は来しておらず,房室結節機能検査より迷走神経の関与が示唆された.

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